会長挨拶

 本研究会では,『「聞こえにくさ」「見えにくさ」に対する指導法の探究と共有~人とのかかわりを支える学習活動を通して~』を研究主題とし,「聞こえ」や「見え」に困りを抱えている児童が在籍している学習集団の中で,確かな学力を身に付けるための指導法や豊かな人間関係を築くための支援等について研究を深めていきたいと考えてます。

 困っている子どもがあなたの学校・学級にいませんか?どのように支援すればよいか一緒に考えてみませんか?

 お気軽にお問い合わせください。

 京都市聴覚視覚教育研究会 

 会 長  日吉 肇

                  

研究テーマ

    「聞こえにくさ」「見えにくさ」に対する

         指導法の探究と共有

      ~人とのかかわりを支える学習活動を通して~

設定理由 近年ICF(国際生活機能分類)の視点から、児童を取り巻く環境に焦点を当てた「環境因子」という言葉や障害のある人の権利条約の「合理的配慮」という言葉が注目され、児童を取り巻く環境を改善することで、その児童が感じている困難さや障害を軽減し、より主体的な学習への参加を保障するという考え方が広がりつつある。また、「障害者の権利に関する条約」の批准を受け、「インクルーシブ教育システム」構築のために総合育成支援教育の充実を図ることが重要であり、「聞こえにくさ」や「見えにくさ」のある児童が普通学級の児童と共に学べる場を設定することや教員の専門性を向上させることが必要不可欠である。

本研究会は平成22年度に発足し、京都市の小学校および総合支援学校の教員に、「聞こえにくさ」や「見えにくさ」のある児童に対する支援の在り方についての理論研修や授業研究会等を実施してきた。また、聴覚や視覚に困りを抱える児童への教材・教具の作成および啓発教材の貸し出しを行ってきた。これまでに本研究会では、研究主題を『「聞こえにくさ」「見えにくさ」の理解と支援の在り方を求めて~人とのかかわりを重視した学習活動を通して~』と設定し、「聞こえ」や「見え」に困りを抱える児童の実態について、難聴学級、弱視教室、ことばときこえの教室、そして難聴児童・弱視児童が在籍している普通学級の担任が、適切な指導や必要な支援の在り方などについて共に研究してきた。全市小学校への実態把握調査や本研究会における実践事例等を通して、普通学級にも聴覚や視覚に困りを抱えている児童が多く在籍していることが明らかとなり、さらには、それらの困りを自覚できていない児童が潜在的に在籍していることが共通認識された。これら「聞こえ」や「見え」に困りを抱えている児童を含め、全ての児童の可能性を最大限に引き出し、誰もが同じように将来展望を抱くことができるよう、一人ひとりの教育的ニーズに適切に対応すると共に、社会の変化に伴う、新しく効果的な指導法の探究にも努めなければならない。そして、これまで本研究会で培ってきた専門性をさらに発展させ、広く共有化していくことが重要である。

これらのことを踏まえ、本研究会では、『「聞こえにくさ」「見えにくさ」に対する指導法の探究と共有~人とのかかわりを支える学習活動を通して~』を研究主題とし、「聞こえ」や「見え」に困りを抱えている児童が在籍している学習集団の中で、確かな学力を身に付けるための指導法や豊かな人間関係を築くための支援等について研究を深めていきたいと考えている。日々悩みながらも児童の支援や指導を積み重ねている会員が、授業を通して、あるいは実践発表、実践交流を通して児童の困りを少しでも改善できるよう研究を深め、共有化していくことに重点をおき、研究活動を推進していく。

活動計画

令和5年度 活動計画

5月23日 第1回役員会

 令和5年度役員決定,研究主題の検討,事業計画検討

6月6日 〇第1回総会 研究会の方向づけなど オンラインにて

5月~8月中 〇実践事例・支援例の蓄積

・聴覚や視覚に困りのある児童に対しての支援を考えた授業実践を重ねる。

・各自実践報告書にまとめる。(8月末締切)

7月31日〇研修会

 10:00~オンライン講演「聞こえに困りのある子どもへの支援とは」

10月頃〇第2回役員会

 ・実践した授業や支援の方法をまとめる。

  ・予算執行計画,購入物品の検討

秋頃 〇研修会 (実践事例報告会)

 ・各自がまとめた実践報告書の交流

1月頃 〇第3回役員会・年間反省

   令和5年度研究会活動についての総括

1月末 〇授業実践

 ・困りのある児童への支援実践例の発信

 ・実践報告書を発信する。

2月頃 〇第2回 総会

 ・年間反省、令和6年度研究会活動についての総括

3月頃 〇第4回 役員会

 ・次年度に向けての方向づけ

夏季研究会報告

夏季研修会報告                 

令和4年8月23日

第1部

東京演劇集団風の江原早哉香氏に「すべての子どもが楽しむために~バリアフリー演劇を通して~」というテーマでお話をうかがった。

東京演劇集団風では、さまざまな障害のある子どもたちが同時に楽しむことができるように「バリアフリー演劇」に取り組んでいる。

字幕が流れるだけではない。手話通訳士も舞台上に立って一緒に表現している。さらに観客である子どもたちや教職員も、同様に表現者になっているのだ。

その表現者たちは出演予定の有無だけでは決まらない。飛び入りで舞台に上がる子どもや、一緒に歌いだす子どもも、作品を作り上げる大切な一員なのである。

実際の子どもたちの様子を映像で見せていただいた。どの子どもも笑顔で、とてもうれしそうに目を輝かせていた。その様子こそがバリアフリー演劇そのものなのではないかと感じた。

第2部

実践報告会を行った。各自が作成した実践報告書を紹介し、今後の指導に生かしていけるよう交流した。その実践報告書とは聞こえや見えに困りのある児童たちに対する各先生方の取り組みが記載されている。指導案集とともに〈令和4年度聴覚視覚教育研究会誌〉に掲載する予定である。

 

追記

働き方改革を意識し持続可能な研究会活動をと考えて、今年度は上記のような形式で研修会を実施した。第1部の講演会・第2部の実践報告会を同時に実施しTeamsやオンラインを活用して実施できたのは大きな成果であった。

1月25日には九条弘道小学校にて東京演劇集団風に「星の王子さま」の公演をしていただいた。難聴学級児童たちは前年度よりワークショップ等で劇団の皆さんと何度か関わっており、表現することの楽しさを実際に感じている。当日、6年生の子たちも舞台にたち、どの子も目を輝かせて公演を楽しんだ。感動を伴う体験であった。