最終稿【丹後】
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例えば,「相手の目をしっかり見て話を聞く」「はっきりとした声で話す」など,日常生活でもよく言われることが,英語活動においてもやはり重要になってくる。しかし,こうしたよい姿は形式的にとらえられがちではないだろうか。「目を見ること」「はっきりとした声を出すこと」という行動そのものが目的となってしまわないように,その行動のもつ相手意識の存在に気付かせることが重要だと考える。そのために,指導者が意図的に発問をしたり言葉がけを行ったりすることで,児童の「伝える姿」「聞く姿」を価値付けることが大切になる。 例えば,指導者と児童とのやり取りの中で,児童が笑顔を見せながらコミュニケーションを図る姿が見られた時には,「Nice Smiling! I’m happy」など,笑顔は相手を嬉しい気持ちにさせることを伝えるようにする。また,児童同士でのコミュニケーション活動では,素敵な姿だけではなく,どうして素敵だなと思ったのかを共有することを大切にする。 このように,ある姿が相手にどのように伝わっているかを実感することで,相手意識の存在に気付き,今後,意識的にコミュニケーションに取り入れようとする姿につながっていくと考える。また,普段,無意識に行っていたことが,相手意識のある行動であったことに気付く場面もあるだろう。今までは無意識のうちに行動していたことも,友だちが気付いて認めてくれることで,今後意識して活動していくことが考えられる。 相手意識のある姿に対する価値付けは,他の様々な場面に広げていくことが大切になる。例えば国語科での学習内容とも関連させながら,指導者が価値付ける姿の具体を明確にしておくことが必要である。また,様々な活動を通して価値付けられた姿は,次項で述べる「振り返りカード」や「掲示」へとつなげていきながら,児童がより意識できるようにする。 (2)活動を振り返って 学習活動を通して自分ができたことや頑張ったこと,気付いたことなどを振り返ることは,自分を見つめ,次の学習につなげていく大切な活動である。英語活動では,各時間の学習を通して,特に「よりよいコミュニケーション」に関して児童から生まれた様々な気付きを大切にした振り返りを行いたいと考える。 そこで,よりよいコミュニケーションを意識させるために,「人と話をするときに,自分で工夫できたことはありましたか」という振り返り項目を設定する。ここでは,「話すとき」「聞くとき」と視点を分けて振り返りをすることによって,児童が双方の視点を意識しながら自身の姿を振り返ることができるようにする。図2-2が,その振り返りカードの例である。 児童の振り返りに対して,指導者は共感的な言葉がけをしたり,相手の立場に立って指導者自身の思いをコメントしていく。例えば,「笑顔で自分の気持ちが伝えられて嬉しかった」といった感想に対して,「笑顔で伝えると気持ちがいいね」「笑顔で伝えてくれると友だちも嬉しい気持ちになるね」などのような言葉がけを行う。自分から進んで工夫ができたことに対して評価するだけでなく,その工夫をすることによって相手はどのように感じるかを伝えることで,形式的な工夫ではなく,その工夫の意義を実感し,「相手意識」をもってコミュニケーションを図ろうとする児童の姿につながっていくであろう。 (3)意識させるために 英語活動を通して児童が気づいた「主体的にコミュニケーションを図ろうとする具体的な姿」が,日常生活の様々な場面でも見受けられるようになることこそ,本当の意味で身に付いた「コミュニケーション能力」である。英語活動の時間だけでなく,あらゆる場面でよりよいコミュニケーションについて意識させていくことで,その力は効果的に育まれるのではないだろうか。 そこで,英語活動を通して気付いた大切なことを教室に掲示し,いつでも児童の目にとまる形にしておくことで,よりよいコミュニケーションに対する児童の意識を高めていけるようにする。 131 図2-2 振り返りカード 小学校 外国語教育 7

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