最終稿【丹後】
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日常言語と異なる言語を扱うからこそ,英語活動の中では,児童から様々な気付きが生まれる。指導者の価値付けなどにより児童自身が気付いた「主体的にコミュニケーションを図ろうとする姿」を意識化させることをねらいとして,「伝えるとき」「聞くとき」といった視点を与えながら,自身の姿を振り返らせることを大切にした実践を進めていく。 (1)活動の中で 130 図2-1 読み聞かせ イメージ図 など,様々な返答の仕方が予測される。その中でも,まず一番大切な点が,伝えようとした姿である。児童がわからないなりにも勇気を出して自分の考えた反応を示すことができたことに対して,指導者は共感的な反応を示したり価値付けたりすることが重要なのである。それが「間違いを恐れず」といった姿の育成につながる。こうした経験を積み重ねることで,「伝えること」への意欲にもつながると考える。図2-1にそのイメージを示す。 英語でのやり取りをした経験が少ない段階だからこそ,耳だけでなくあらゆる感性を動員し相手の伝えようとしていることを考えながら聞く力が育まれる。それと同時に,絵本を通したコミュニケーション活動において自分の思いが伝わったといった成功体験が,今後「伝えたい」といった意欲につながるのではないだろうか。そこで,単元の中で,一冊の絵本を段階的に複数回読み重ねることで,「聞く力」から「伝える力」につながる読み聞かせの実践を行う。 第2節 目的・場面設定の工夫 児童の「伝えたい」「聞きたい」といった思いを引き出すためには,児童の興味や関心を高めるような活動の工夫が必要である。単に,与えられた英語表現を使って形式的にやり取りするだけでは,こういった思いは生まれないだろう。児童自身の本当の思いが込められたコミュニケーション活動の中でこそ,「相手に知ってほしい」という思いが生まれるのであり,それぞれのオリジナリティが存在するからこそ,「相手のことをもっと知りたい」という思いが生まれるのである。そして,このような思いが,児童の粘り強く最後まで相手の話を聞く姿や,間違いを恐れずに挑戦する気持ちをもって自分のことを伝える姿につながるのである。 そこで,児童の思いが表現されるような単元終末のコミュニケーション活動を取り入れた単元計画に基づく実践を進めることにした。「何かのために」といった目的意識や,「誰かのために」といった相手意識が高められるようなコミュニケーション活動を設定し,互いの思いを伝え合うことができる場面を設定する。そうすることで,児童の活動意欲が高められると考える。 例えば,野菜の英語表現を使って,サラダを作るといった活動場面を例に挙げる。ここでは,お店屋さんごっこのようなやり取りを通して,自分の好きな野菜を集めながらサラダを完成させていく活動が考えられる。お店屋さんのような「ごっこ遊び」を取り入れた活動場面を設定することで,児童が役になりきりながら楽しく活動できると考える。 さらに,「自分にとって特別な人のためにサラダを作る」という活動の目的を明確にすることで,相手意識や目的意識をもって活動できるのではないだろうか。「いつも仕事を頑張っているお父さんに元気になってほしいから,いろんな野菜を使ったカラフル元気サラダを作ろう」というような目的を自ら設定することで,児童の思いが込められた活動になる。また,こうした特別な思いが存在するからこそ,児童の「伝えたい」という気持ちも高められると考える。 加えて,一人一人の思いが異なるサラダであれば,互いに「どんな思いをもって作ったサラダなのか知りたい」という気持ちも高められるであろう。それぞれ違った思いが込められる活動だからこそ,相手の思いにも耳を傾けようとする児童の姿が期待できるのである。 第3節 「伝える姿」「聞く姿」を価値付ける コミュニケーションを図る上で,互いに気持ちのよいやり取りを行うための工夫は様々である。

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