最終稿【丹後】
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要素Ⅰ:語学力・コミュニケーション能力 要素Ⅱ:主体性・積極性,チャレンジ精神, 要素Ⅲ:異文化に対する理解と日本人として 図1-1 「海外で働く意思」に関する調査結果 「グローバル化」といった言葉は,私たちの生活の中で十分浸透してきている。今や国単位ではなく,地球規模での人やモノ,金,情報などの流通が簡単になり,国と国との境界線が薄れつつある。そのような社会背景とともに,日本では人口が年々減少し,超少子高齢化が進んでいる。また,経済のみならず社会の様々な分野で低迷が続いている現状もある。今後,日本では,世界的協力を視野に入れながら,様々な問題解決に向けて取り組んでいく必要があり,更なるグローバル化の進展が必要不可欠となってくるであろう。そのため,今の子どもたちをグローバル人材として育成していくことが求められている。 では,「グローバル人材」とは,具体的にどのような人材なのであろうか。グローバル人材育成推進会議では,人材の概念として次のように定義されている(1)。 単に英語を流暢に話せる力だけでは,グローバル人材として十分とは言い切れない。その語学力が生かせるだけのコミュニケーション能力とともに,要素Ⅱや要素Ⅲに定義されているような人間性を兼ね備えた人材が求められているのである。今の子どもたちをグローバル人材として育成していくことを考えたとき,指導者は外国語を通して学ぶ環境の中で,こういった人間性にも着目しながら学習活動を進めていくことが必要ではないだろうか。 今年度より,小学校高学年における教科としての外国語科,そして中学年における外国語活動が始まると同時に,京都市では独自に低学年における英語活動が全面実施となった。京都市の子どもたちは,小学校に入学すると同時に外国語に出会うことになったのである。この外国語との出会いを大切にしながら,外国語教育を通して育むべき力について考え,また,人間性を育むといった観点から,幼児教育で培われた力を円滑に接続できるような英語活動の可能性について探っていきたい。 協調性・柔軟性,責任感・使命感 のアイデンティティー 小学校 外国語教育 1 (1) グローバル人材育成推進会議 『グローバル人材育成推進会議中間まとめ』2011.6 p.7 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/46/siryo/__icsFiles/afieldfile/2011/08/09/1309212_07_1.pdf 2021.3.1 125 60.4% 27.9% 11.8% はじめに 第1章 「コミュニケーション能力」とは 第1節 今,求められている力 (1)グローバル化社会と日本人 産業能率大学では,2001年度より新入社員を対象としたグローバル意識調査を行っている。2017年度には「第7回新入社員のグローバル意識調査」が実施された。「日本企業はグローバル化を進めるべきか」という問いに対して,79.5%の新入社員が肯定的な意向を示しており,その割合が過去最高となった(2)。この結果から,グローバル化推進に対する意識の向上がうかがえる。 しかし一方で,同調査において次のような結果も得られた。図1-1は,海外で働く意思についての調査結果である(3)。 この調査結果を見てみると,「海外で働いてみたいとは思わない」と考える社員の割合は,調査開始の2001年度から増加傾向にあり,2017年度は6割を超える結果となっている。その中で,一番多かった理由が「自分の語学力に自信がないから」であった。確かに,グローバル人材に求められている要素にもあるように,使用言語の異なる地域で人々と共に働き,共に生活する上で必要な言語を習得して活用できる力は,今後必要とされる力の一つであろう。では,その語学力を身に付けることができれば,グローバル人材として十分なのであろうか。 平成26年に行われた英語教育の在り方に関する有識者会議では,国際共通語である英語力の向上は日本の将来にとって不可欠であり,アジアの中でトップクラスの英語力を目指すべきだと主張海外で働いてみたいとは思わない 国・地域によっては働いてみたい どんな国・地域でも働いてみたいと思う

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