最終稿【丹後】
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今年度から1年生10時間,2年生15時間の英語活動が始まった。限られた時間ではあったが,研究協力校の子どもたちが,「楽しかった」という気持ちを,言葉だけでなく,表情や体全体を使って表現する姿を見て,本来子どもたちがもつ「伝える力」を実感した。休み時間にも「Here you are.」と言葉を掛けながら一枚の紙を友だちに渡す児童の姿があった。このように,児童が何気ない場面で自然に英語を使いながら友だちとつながる楽しさを感じてほしいと願っている。 もって活動に取り組んでほしいのかが,自ずと児童に伝わる振り返りになったと考える。 振り返りカードの「話すとき」の欄に,いつも「言葉を間違えてもあきらめない」と記述している児童がいた。この児童は,実際に間違えてしまった経験を通して,間違ってもあきらめないことの大切さに気付くことができたのだろう。指導者からの言葉がけなのか,友だちからの励ましなのか,様々な要因が考えられるが,一番大切にしなければいけないことは,この児童が最後まであきらめずに頑張りたいといった思いをもって英語活動に取り組んでいたことである。正にこれは,英語教育の在り方に関する有識者会議で述べられていた「間違いを恐れずに積極的に英語を使おうとする態度」であり,「粘り強さや挑戦する気持ち」なのだと考える。今後,「コミュニケーション」だけでなく,グローバル人材に求められている「要素Ⅱ」(p.1)にまとめられている「人間性」にも着目した取組が必要であると考える。 第3節 今後に向けて 第1章第1節(2)(p.2)で述べたように,今後は様々な価値観や背景をもつ人々と, 共に社会を形成していけるための力が必要とされている。よりよい共存社会を形成していくためには,やはり「相手意識」が重要であると考える。自分の考えや思いを相手に伝えるとともに,相手の立場で物事を考えたり共感的にとらえたりしながら課題を解決していくためには,相手意識をもってコミュニケーションを図る力が必要ではないだろうか。 本研究において一番大切にしてきた「相手意識」。1年生,2年生の児童は,実際のコミュニケーション活動を通して,互いの感じ方や思いを言語化しながら共有することで,それぞれの行動や姿のよさを実感できたのではないだろうか。また,指導者や友だちからの言葉がけによって,コミュニケーションを図る楽しさを感じることができたのではないかと考える。 しかし一方で,伝えることの難しさを感じている児童も少なからず存在しているのも事実である。相手意識の大切さに気付けたからこそ,それを生かして間違いを恐れずに積極的にコミュニケーションを図ろうとするようになってほしいと考える。そのためにも,難しいことがあっても間違いを恐れずに挑戦することのよさを児童自身が感じることのできる場面を,指導者が意識して設小学校 外国語教育 21 定し,価値付けることが重要である。 1年次の研究を通して,活動中の様々な場面で「間違いを恐れずに」「挑戦して」「意欲的に」「自分から進んで」など,活動に主体的に取り組む児童の姿がいくつかの場面で見られた。これはやはり「外国語」といった新たな言語を扱う教科だからこそ,より顕著に表れた姿であると考える。 低学年児童は,新たなことに対して興味・関心を高く示し,物怖じせずに取り組むことができるといった素晴らしい特性が見られる発達段階である。新たに学んだ言葉を実際のコミュニケーションの中で進んで使ってみようとする姿や,場面に応じて自ら英語表現を選択して伝えようとする姿は,外国語教育を通して大切にされるべき姿である。児童の発達特性を踏まえると,このような姿勢は低学年における英語活動だからこそより効果的に育まれるのではないかと考える。 このような児童の姿を育むためにも,まず指導者自身が児童のどのような姿を引き出したいのか,明確な意図をもって活動を設定すること,そして児童にとってより身近で体験的に英語に触れることができるような活動場面の工夫を行うことが重要である。それとともに,活動に取り組む児童の姿を,指導者がどのように価値付けていくのかが大切になる。 今後は,よりよくコミュニケーションを図ろうとする姿勢に着目し,児童が更に強い思いをもって臨むことができるコミュニケーション活動の在り方を探っていきたい。自分のことを伝える経験を積み重ねていくことで,児童が自信をもってより主体的にコミュニケーションを図ろうとする姿が期待できるのではないだろうか。 また,児童がよりよいコミュニケーションについて考えることで,相手を思いやる気持ちを育ん 145 おわりに

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