144 〇児童の思いを大切にすることで 単元終末には,児童それぞれの思いが込められたコミュニケーション活動を設定した。十分慣れ親しんできた英語表現を使って,児童が実際のコミュニケーション活動において自分のことを紹介できた経験は,今後の英語による言語コミュニケーションに対する自信につながったと考える。 それと同時に,どのような思いが込められているのかを伝え合うことも大切であると感じた。思いがあるからこそ,児童の「やりたい」「伝えたい」といった活動意欲が高められるのである。もちろん,まだ外国語学習を始めて間もない低学年児童にとって,自分の思いを英語で表現することは難しく,日本語で伝え合うことになる。実際に児童同士が互いに伝え合う場面では,英語で作品を紹介する部分と日本語で思いを伝える部分があった。 ここで注目したのは聞き手の姿だった。自分とは異なる作品を見て,友だちの発表を前のめりになって聞こうとする姿が見られ,発表後には,質問や感想を伝え合うことができた。研究協力員からは,「それぞれの思いが異なる作品紹介だからこそ『知りたい』『聞きたい』といった姿が生まれたのだ」という振り返りがあった。 このことから,児童の本当の思いが込められた,オリジナリティを大切にしたコミュニケーション活動を設定することで,より主体的な児童の姿が期待できると考える。 〇絵本の読み聞かせを通して 様々な絵本を活用し,児童の「聞く姿」をイメージしながら,指導者はどのように読み聞かせをすればよいかを考えた。この活動は,児童への手だてであるとともに,指導者の「伝える姿」の変容につながったと考える。研究協力員からは,絵本の読み聞かせを通して,自身の英語を使おうとする意識が高まったという声もあった。何とか児童に伝わるようにするために,考えながら読み聞かせをしていると,自然とジェスチャーが出てきたり,表情を変えたりするような姿も実践の中で見られた。読み聞かせの活動を通して,指導者が自身の意識の変容を実感することができたのである。 1年生の読み聞かせでは,体を動かしながらまねをすることで,ただ耳で聞くのではなく,体感を伴いながら「読み聞かせが楽しい」という意識を高めることから始めた。動作化を取り入れることで,児童の絵本に対する興味の高まりを感じている研究協力員もいた。絵本の読み聞かせだけでなく,体を動かすような活動が有効であることを実感できたようである。 また,研究協力員の振り返りの中で,「児童が声に出して自分のことを伝える活動が有効だった」という声もあった。この有用性を実感し,英語活動だけでなく,どんな場面でも意識しながら取り組むようになったということであった。 〇価値付けを意識することで 英語活動は,ほとんどの活動が人とのやり取りによって成り立っている。指導者と児童,児童同士,またここにALTが加わることもあり,必ず「相手」が存在し,コミュニケーションが生まれる。今回,大切にしてきた「相手意識」のある姿は,無意識的であれ意識的であれ,あらゆる場面に存在する。その姿のよさに気付いてこそ,より相手意識が高められると考える。 今回の実践では,指導者の言葉がけだけでなく,児童自身の声をつなげることで,その姿の価値に気付けるようにした。相手に対してどのような思いをもってやり取りをしていたのかを共有する活動は,相手意識を高めるとともに,実際の活動の中には「思いやり」とも感じ取れる姿もうかがえた。受容的・共感的な姿勢で指導者が英語活動を進めることで,児童のやり取りも共感的で,温かなものになったと感じている。 〇振り返りを通して 振り返りカードに,「人と話をするときに,自分から工夫できたことはありましたか」といった項目を設定したことは,児童自身が自分の姿を振り返る良い機会になったと考える。もちろん,授業の始めから「目を見て話を聞こう」と意識して,それが授業終わりまでずっと意識できるといったことは大人でも難しいことであり,そうした意図でこの振り返りを取り入れたのではない。活動を終えて,自分の姿を改めて見つめ直させることで,児童が無意識のうちに行っていた工夫に気付くきっかけとすることがねらいであった。 研究協力員との話の中で,「自由な振り返りにすると,おそらく『楽しかった』と記述する児童がほとんどだったと思う」ということが話題になった。指導者が意図して振り返りカードに「話すとき」「聞くとき」それぞれの視点に立って振り返る項目を設定したことで,どのような視点を
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