最終稿【丹後】
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結果を見てみると,全ての選択項目に関して増加の傾向が見られた。特に,実践前は「言葉」「声の大きさ」「話す速さ」など言語や音声情報に意識が偏りがちであったが,実践後には「身振り」「目」「表情」など,視覚情報に対する意識の高まりも見られた。これは,音声情報だけでなく視覚情報も大切にしながら伝えたり聞いたりする活動や,その姿を児童や指導者の言葉で価値付けることを大切にしてきたことが,児童の意識の高まりにつながったと考えられる。 上記の質問に対する選択項目の中には,「とくにない」といった選択項目も設定していた。表4-3は,両校1年生113名のうち,「とくにない」にのみ選択した児童,または未回答だった児童の人数を集計した結果である。 表4-3 1年「とくにない」もしくは「未回答」の児童数 実践前 実践後 「伝える」「聞く」どちらに関しても,実践後には「とくにない」と答えた児童の数が減少した。 このことから,よりよいコミュニケーションにつながるような工夫について,その有用性を感じて一つでも自分に取り入れようとする児童の割合が増えたことがわかる。すなわち,相手のことを考えながら伝えたり聞いたりすることに対する意識が高まったと考えられる。 また,次のような結果も出ている。図4-3,図4-4は,「話を聞くことは好きですか」「自分の考えや気持ちを伝えることは好きですか」といった設問に対する結果である。 「聞くこと」に関しては,肯定的な回答が大きく増加しており,「聞くこと」の楽しさを味わう経験が増えたからではないかと考えられる。 「伝えること」に関しても,少しではあるが,肯定的な回答が増加した。しかし,注目したいのは,否定的な回答の割合の変動である。実践前「わからない」と回答していた児童の数が,実践後には減少した。これは,自身の「伝える姿」について考えるようになった児童が増えた結果ではないだろうか。 29 一方で,増加率が一番大きいのは「あまり好きでない」と答えた児童の割合である。これは,「伝えること」に関心が低く無回答だった児童が,自分の気持ちや思いを伝える経験を通してその難しさを実感したことが,回答に影響したのではないかと考えられる。 第2節 実践を通して見えてきたこと 研究協力員への聞き取りとともに実践を振り返ることで,児童や指導者の変容について様々なことが見えてきた。 4 143 (n=32) 図4-2 1年「相手の話を聞くときに, どんなことに気を付けながら聞いていますか。」 (n=113) 図4-3 B校2年「話を聞くことは好きですか。」 図4-4 B校2年「自分の考えや気持ちを伝えることは 小学校 外国語教育 19 好きですか。」 (n=32) 伝える 聞く 17 3

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