うのは初めての経験だった。 この児童は,友だちから「Thank you」と言ってもらったことが嬉しい気持ちにつながり,コミュニケーションに対する意欲が高められた様子がうかがえる。自分が言うことで相手も嬉しくなって,また自分も嬉しい気持ちになるという振り返りをしている。「Thank you」という言葉のもつ意味,そして相手と自分とのよりよいつながりについてよく考えていることがわかる。この児童の気付きに対して,指導者は「素敵なやり取りができたこと」を価値付け,また,「Thank you」の言葉を大切に思う児童の気持ちに対して,共感的な言葉でコメントを返した。 また,図3-9に示すような別の児童の振り返りの記述もあった。 この振り返りでは,自分が欲しい色を友だちに伝えたときに,友だちがその色を渡してくれて,自分の好きな色を塗ることができたことが嬉しかったと記述している。後にも書かれているように,「ライトブルー」といった少し難しい色の英語表現を使ってみて,相手に伝わったことが嬉しいという振り返りである。この児童の振り返りに対しても,指導者は「色の言い方を覚えて伝えられたこと」そして「友だちとやり取りができたこと」に対して共感的に言葉を返した。 1年生の英語活動では,いろいろな英語表現を楽しみながら慣れ親しむ活動を大切にし,歌やゲームなどの活動に数多く取り組んできた。様々な活動を通して,児童自身が英語を使って表現できるようになった力を実際のコミュニケーション活動の中で発揮し,そこで伝わった経験が活動意欲につながったと考える。また,伝える工夫や聞く工夫を意識させることで,「相手」を意識した記述が見られたと考える。そして,児童ができたことや感じたことに対して,指導者が受容的・共感的に受け止めることが,「コミュニケーションって楽しい」「もっと伝えたい」という児童の気持ちを引き出すことにつながったのではないかと考える。 次に示す図3-10は,児童同士のやり取りを大切にしたコミュニケーション活動を終えた2年生の振り返りの記述である。 「人と話をするときに自分で工夫できたことはありましたか」の質問項目に対して,「はなすとき」「きくとき」と立場を明確にしてその具体的な姿を記述する児童が多く見られた。 1年生に比べて2年生の学習活動では,児童同士でコミュニケーションを図る活動が多かった。児童は,活動を通して様々な工夫に気付き,実際にその工夫を取り入れながらコミュニケーションを図る経験を重ねていくことで,その工夫の有用性を実感することができ,自分から積極的に取り入れようとする意識が高まったことが考えられる。 また,図3-11は児童の感想の記述である。 学習の感想から,進んで工夫を取り入れたことで,よりよいコミュニケーションを図る楽しさを感じることができていることがわかった。 このように,児童がよりよいコミュニケーションの具体的な姿について考え,自分が進んで取り入れようとしたことを改めて振り返り,その良さを感じることで,ゲームや歌だけではない,コミュニケーションにおける「楽しさ」を実感できたと考える。 (3)意識させるための取組 振り返りの活動を重ねていく中で,よりよくコミュニケーションを図る上で大切にしたい様々 141 図3-9 児童の振り返り③(1年) 図3-10 児童の振り返り④(2年) 図3-11 児童の振り返り⑤(2年) 小学校 外国語教育 17
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