児童C「Dさんが,…ボードで指さししながらしてく 指導者「Dさん,どうして言ってあげたの?」 児童D「合ってたり間違えていたときに何も言わな 指導者「合っていたら『Good』間違えていたら『Nice 児童Dは,自分の思いをもって「Good」や「Nice 児童E「この列の人全員,声が聞き取りやすかった」 指導者「いいですね。聞こえやすい声。声の大きさを 児童F「普通に言ってた」 指導者「普通に言ってたの」 児童E「でも聞き取りやすかった。工夫しているよう 指導者「ぼそぼそしゃべっていたらわからないしね」 児童G「ほそぼそしゃべっているとどんな問題なのか 児童F「でも勇気はもった」 指導者「ちゃんと大きな声で言おうという勇気はもっ 児童F「勇気というか…聞き取りやすいとか,お互い 指導者「お互いが楽しめるようにだね」 140 れて間違いが少なくなって。合っていたときに『Good』とか,『Nice try』とか言ってくれてうれしかった」 かったらお互いに楽しめないから」 try』。お互いに楽しめたらいいよね」 意識した人いる?」 に見えた」 わからない」 てた。なるほど。なぜ,そう思ったの」 に楽しめるように。せっかく出会えた問題でやってるのに,小さい声だったら楽しめる気分がないと思うから」 try」と言っていたことがわかる。「お互いに楽しみたい」といった児童Dの思いが,児童Cの嬉しい気持ちにつながったことで,相手を思う言葉や行動が価値付けられたと考える。 このように,指導者が児童の気持ちを引き出す問いかけを行うことで,児童が思いを言語化し,それを互いに共有し,目には見えない相手意識の存在に気付くことができたと考える。また,指導者が共感的に反応しながら全体共有することで,他の児童にとっても今後のコミュニケーションに生かせるような気付きにつながった。 また,同じ中間評価の場面で,次のような指導者と児童のやり取りもあった。 この場面では,児童Eが相手の良いところに気付いていたが,そのことに相手児童は意識をせずに取り組んでいた場面である。友だちから改めて「聞きとりやすい声」と言われたことで,児童Fは自分の姿を振り返り,「勇気をもっていた」ことに気付くことができた。児童Gは,お互いに楽しめるように勇気をもつことで,無意識に相手に聞き取りやすい声で話すことにつながったと気付くことができた。 これらの事例のように,指導者の意図的な発問を繰り返しながら,実際のコミュニケーション活動を通して感じていたことを児童の言葉で表現できるようにした。やり取りだけでは目に見えない,互いの思いを共有できるように指導者がつなぐことで,児童は普段意識的・無意識的に行っている相手意識のある行動のよさに気付くことができた。このように,児童の言葉で相手意識のある姿を価値付けるために,指導者は発問を工夫していくことが大切であると考える。 しかし,気持ちを共有していく中で,明確な意図をもたない行動である場合もあり,「どうしてそうしようと思ったのか」の問いかけに必ずしも答えられるとは限らない。このような場面では,その姿がどのように相手に伝わるのかを他の児童から引き出したり,指導者が言語化して伝えたりするなどして,価値付けていくことが重要であると考える。 (2) 振り返りの場面での取組 学習活動の終わりには,第2章第3節(2)(p.7)で例示した振り返りカードを活用して振り返りを行うことを大切にした。児童が,「伝えること」「聞くこと」を視点に自身が工夫できたことについて振り返り,記述できるようにした。また,指導者は,児童の振り返りに対して,意識して受容的・共感的なコメントを返すようにした。 次に示す図3-8は,1年生Unit2第4時「欲しい色を伝えて,オリジナルちょうちょを作ろう」の学習活動における児童の振り返りである。 児童は,あいさつや気分を伝え合うような簡単なやり取りは行っていたが,「こんなものを作りたい」といった思いをもって友だちとやり取りを行図3-8 児童の振り返り②(1年)
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