最終稿【丹後】
15/24

2年生の最終単元Unit3では,読み聞かせを通問いかけ 言い換え 共感的な返答 承認する 小学校 外国語教育 13 度は,指導者の「No?」という問いかけにうなずく様子を見せた。英語を使って表現することは難しいが,自分の思いを伝えたいといった児童の思いが引き出されたものと考えられる。 読み聞かせを終えた後,友だちとのコミュニケーションを楽しむ活動があった。その場面で,児童Aは,和らいだ表情で友だちとやり取りをし,小さい声ではあるが「Thank you」と自分の気持ちを英語で伝えることができた。 このように絵本を活用し,指導者は日本語を使わずに,身振りを工夫したり実際に絵を描いたりしてやり取りを行うことで,児童も日本語ではなく英語やジェスチャーを使って伝えようとする姿につながったと考えられる。また,指導者が受容的・共感的な姿勢で児童とのやり取りを大切にすることで,児童の「伝えたい」といった気持ちを高め,コミュニケーション活動に対する意欲を引き出すことができたと考える。その中で,指導者がジェスチャーを加えたり表情を変えたりするなどの答え方のモデルを示すことによって,児童は安心して返答することができ,ジェスチャーや表情を工夫しながらやり取りを楽しんでいる様子が見られた。このように,児童とのやり取りを大切にしながら読み聞かせを行うことで,児童のコミュニケーション活動をよりよいものにすることができた。 第2節 目的・場面設定の工夫の実際 して十分慣れ親しんできた「Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?」の絵本を,自分たちがアレンジして1年生に読み聞かせを行うことを目的とした。 単元初めの指導者による読み聞かせでは,Unit1同様に単元最終のコミュニケーション活動がより主体的なものとなるように読み聞かせの工夫を行った。この絵本は,似たような英語のフレーズが何度も繰り返される中,様々な色の動物が登場する展開となっており,読み聞かせを重ねていくことで児童も自信をもって英語で表現する姿が見られた。このような児童の姿を大切にしながら,単元最終の活動に向けて準備を行った。 「1年生にオリジナル絵本を紹介しよう」というめあてをもって学習活動を進めた。児童に「1年生に読み聞かせをする」ということを伝えたとき,とても驚いた様子を見せていた。それととも 137 た。表3-5は,実際に指導者が使った英語表現である。 表3-5 指導者が読み聞かせで使用した英語表現 Do you like ~? Yes? No? What fruit? What color? Oh, you like ~. You don’t like ~. So, so. I like ~, too. Me, too. You, too. Yes, that’s right. Oh, yes. Very good. / Nice. / Good. これらの表現については,もちろん児童は未習であり,指導者が話す内容についても「先生はこんなことを尋ねているのかな」と推測しながら聞くことが必要となってくる。発問だけにならないように,まずは指導者自身のことを伝えることから始め,発問内容の推測を促すようにした。また,やり取りに関しては,児童が必ずしも英語で答えることを求めず,日本語で答えたり非言語的要素を使って答えたりする姿も含めて,児童が伝えようとしている姿勢を共感的にとらえることを大切にした。 読み聞かせが始まり,数人の児童とのやり取りをしてから,次に児童Aに問いかけた。児童Aは,普段行動が遅れがちであり,自分の考えや気持ちを言葉で表現することが得意ではない児童である。指導者は,意図的に「Do you like blueberries?」と問いかけると,初めは返答に戸惑っている様子であった。そこで,児童が答えやすいように指導者が「Yes? 」と支援すると,「うなずく」という表現ではあったが自分の思いを伝えることができた。その児童の反応に対して,指導者はすかさず,「Yes? Me, too!」と嬉しい表情で返答した。 その後も指導者は,質問を個人に投げかけたり全体に投げかけたりするなど,教室全体がやり取りを楽しむ雰囲気作りを行った。すると,初めは指名されても「うなずく」だけだった児童Aが,自分から挙手をして,指導者の質問に答えようとする姿を見せた。その姿を見つけた指導者は「Do you like gobo?」と再び質問を投げかけると,今

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る