図2-1 夏祭りのイメージを分解したXチャート そこでこのような図を用いて,におい,うごきなどのいくつかの視点に分けて思い出すよう指示することで,児童が記憶を多面的に分解し,多くの情報を引き出すことができるようになる。児童によっては,自分なりの視点を設定したり増やしたりして,より多くの情報を見つけ出すこともあり得るだろう。 この図2-2は,第1章第1節(4)で示した分解の思考を図式化したものである。フィッシュボーンと呼ばれる図だが,問題の原因を多面的にとらえることに役立つ。 ②抽象化 図2-2 ごみ問題をいくつかの原因に分解した フィッシュボーン では,様々な教科等において児童がプログラミング的思考を働かせれば,児童が自動的にその汎用性を実感するかというとそうではない。やはり1年次の研究同様に図式化や言語化といった手だてが必要ではないかと考える。 どの教科等で実践する場合も,使う思考ツールや思考スキルを表す言葉は共通する。例えば,第1章第2節(1)(p.5)で示したようなステップチャートは,同じ形式のまま他の授業場面でも活用することができる。そして,指導者の「手順を示そう」「順番に考えよう」といった言葉により順序立てることを促された児童は,思考ツールを使って考える活動を繰り返し行う中で,どの教科等の学習活動であってもプログラミング的思考を活用していることに気付けるであろう。 つまり,1年次の研究における,児童に思考の意識化を促す手だてであった図式化や言語化が,プログラミング的思考の汎用性を実感させる手だてにもなり得ると考える。 では,プログラミング的思考をどのような思考スキルととらえ,どのような思考ツールを用いればよいのか。黒上らの研究を参考に,思考ツールやその活用例を示す(17)。なお,活用例を述べるにあたり,第1章第1節(4)(p.3)で示した思考の要素の順に従い,論を進めていく。 ①分解 分解とは,問題や動きをいくつかの要素に,理解や解決ができるように分けることである。第1章第1節(4)で示したごみ問題の原因を調べる活動は,大きな問題を小さな問題に分けているととらえることができる。このような思考は,物事を一つの面から見ているだけでは難しい。 物事を一つの面から見ているだけではまだ把握していない事実を見逃しているかもしれず,誤ったとらえ方から問題解決方法を模索する危険性がある。あるいは,これまでとは違った角度からとらえることによって新しい解決方法を導く可能性が生まれるかもしれない。こういった思考は,「他にも情報はないかな」と調べたり,見方を変えて他の面から見たりすることでできるようになる。 そこで,分解の思考を可視化する思考ツールとしては,多面的に見る思考スキルに対応するXチャート(YやWの形のものもある)やフィッシュボーンが適すると考える。以下,図2-1と図2-2に思考ツールと使い方の例を示す。 小学校国語科においては,四季それぞれに児童が感じるイメージや思い出を様々な形で表現する小学校 プログラミング教育 7 活動が設定されている。その際,一部の児童は自身がもっている一面的な見方だけでは記憶から少しの情報しか取り出すことができず,何を表現してよいかわからないままありきたりな言葉で表現することになってしまう。記憶はあるのだが,どの情報を言語化して表現すればいいのかわからないのであろう。 問題解決に必要な本質的な部分を見いだし,詳細を省くことが抽象化である。問題に関わる様々な要素のうち,全てを踏まえて解決しようとすると問題が複雑になりすぎる。そこで本質的な要素のみを抽出する問題の抽象化が必要となる。あるいは焦点化と言い換えることもできるであろう。それは例えば,問題解決の方向性を決めるときに行われる。次ページ,図2-3に思考ツールと使い方の例を示す。 このピラミッドチャートでは,下段が詳細な情11
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