ントと,筆者の考えるプログラミング的思考の要素との対応 8 ⑤評価 プレゼンを作成した後,練習してみたところ,説明しにくい部分があったり,意図が伝わっていなかったりしたならば,プレゼンを作り直さなければならない。スライドの順序を見直すだけなら簡単だが,そもそも必要な情報が足りていない場合もある。分解や抽象化の段階で間違っていたのかもしれない。 意図どおりのプレゼンができたので,授業参観で児童が発表した。発表内容はわかりやすく,参観者からの素敵な感想がもらえた。しかし,参観者の家庭でごみの実態は変わらなかった。となると,使い道はあるのに捨ててしまう姿勢を改めるという問題解決の方向性そのものが間違っていたのかもしれない。実行したことが目的や意図に対して最適かを確認し修正・改善していく,これが評価である。 以上が,プログラミング的思考の具体である。 なお本市においてはプログラミング的思考の重要ポイントとして「問題解決のために,ものごとを分解・構築・試行錯誤して考えること」(10)と示されている。本研究における五つの要素は,京都市の重要ポイントをより細分化したものであるととらえることができる。以下にその対応関係を示す。 表1-2 京都市におけるプログラミング的思考の重要ポイ 整理すると,プログラミング的思考とは問題解決の過程において必要な分解,抽象化,アルゴリズム的思考,一般化,評価の思考であり,問題解決の方向性を考えたり,問題解決手順を最適化したりすることに役立つのである。 第2節 学びの転移を促す (1)1年次の研究概要 学んだことがその授業限り,その教科限りのものにならず,様々な日常の場面で発揮されるようになることが教育の理想である。学習指導要領に示される資質・能力は正にそのような汎用性を意小学校 プログラミング教育 4 図したものであり,本研究の目指すプログラミング的思考を生かした問題解決能力もそうである。しかし,学んだことが応用されるようになる(以下,転移という)ことは難しい。 では,プログラミング的思考を転移させるにはどうすればよいのであろうか。 何かを理解したり,解決したりする思考には一定のパターンがある。例えば,歴史的な事柄を理解するのであれば時系列に順序立てることで,ある出来事がなぜ起こったのかを理解しやすくなる。 また,同時期に起こった別の出来事の中には関連性があるものもあり,関連付けることでより理解が深まることがある。 こういった「順序立てる」や「関連付ける」といった思考の仕方を「思考の結果を導くための具体的な手順についての知識とその運用方法」(11)ととらえ,鍛えることができるスキルであるとする考え方がある。その場合,これらの思考は思考スキルと呼ばれる。プログラミング的思考にも,一連の動きを小さな動きに分解してから順序立てるというように,具体的な手順がある思考スキルの一部ととらえることができよう。 中学生において,思考スキルがどのような条件下で転移しやすいかを調べた佐藤によると,思考スキルが転移する条件は以下のとおりである(12)。 プログラミング的思考は,資質・能力である。資質・能力とは,(そもそも知らないので)学んで身に付けるもの(例えば知識)ではなく,「自分の中にあるものを引き出して使うもの」(13)とされている。つまり,児童の中に未熟な形で存在しており無意識のうちに用いていたプログラミング的思考を何らかの形で意識化させ,自由に引き出せるようにすることが転移だといえそうである。 また,その有効性を感じれば感じるほど,それらの思考を働かせようと思うがゆえに,転移が生じやすくなると考えられる。 そこで1年次の研究においては,児童にプログラミング的思考を意識化させるために,思考の言語化と思考ツールを用いての図式化を行った(14)。 例えば算数科の筆算においては,児童が筆算の手順を考え,次ページの図1-1のようにステップ○無意識のうちに用いていた思考スキルを意識化させ,メタ認知させ活用を図ると,他の場面への転移を生じやすい。 ○思考スキルを活用することの良さや意義を実感している生徒ほど,その転移が生じやすい。
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