001総教CR30430R2研究論文(木村)
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考スキルの習得,転移,つまり問題解決能力の伸長へと導くことができるであろう。 (2)思考ツールとICTの併用 本研究で示したとおり,思考ツールを適切に運用すればプログラミング的思考を含む思考スキルを育むことや指導者が児童の思考を見取りやすいことなど,学習にとって様々な面で有効である。しかし,ICTと組み合わせることでより効果的・効率的に運用することができるので,その可能性に触れたい。 例えば,本研究においては思考ツールと付箋を併用する活動を何度も行った。付箋に情報を書いておくことで,えんぴつでノートに書くよりも,分類したり順序を並べ替えたり選択したりすることが容易になる。しかし,付箋ははがれやすく紛失しやすいというデメリットがある。それを解決することができるのが,ICTである。 GIGAスクール構想によって児童生徒に一人1台情報端末が配布されたが,Microsoft365のアカウントも同時に配布された。全児童生徒が,いつでもどこでもMicrosoftのサービスを受けられるようになったわけである。例えばその中の一つであるPowerPointを使えば,スライド上に思考ツールを描き,一つのテキストボックスを付箋に見立てて情報を追加していき,整理することが可能である。データであるから,情報の加除修正は容易であるし,はがれて落ちる心配もない。 さらに,Teamsの機能を使えばPowerPointをグループの複数人で共有し,同時編集することが可能になる。そうすることで,個々人が自分の手元の端末で操作しながら,一つの思考ツール上で情報を整理することが可能になる。応用すれば,Aさんが図書室で調べながら,Bさんは教室で指導者と相談しながら共同編集するということも可能になる。体調が悪く学校を休んでいたCさんは,家からアクセスして途中経過を確認することができる。 また,グループで使った思考ツールは,例えば模造紙に書いた場合はそれ1枚しかないので,個人の成果物としてノートやファイルに保存することが従来は難しかった。大きなホワイトボードに書いた場合も同様である。しかし,ICTを使えば,グループのメンバーでファイルを共有しているので,個々人が自分のフォルダに保存して,必要に応じて活用することもできる。 践との大きな違いであり,転移を確認することができた理由ではないだろうか。 この量を確保した上で,振り返りをすることの重要性も明らかになった。児童に自身の思考をメタ認知させ,その日習得した思考スキルについて有効性を実感させる,これがまず必要な手だてである。次いで,児童に問題解決のための思考スキルを選択する機会を与え,問題解決をさせる。そのことが,正に問題解決している瞬間の自身の思考をメタ認知させ,どのような思考がどのような場合に有効なのか,あるいは有効ではないのか,実感させる機会となる。こういった振り返りを繰り返すことで,児童は思考スキルを習得し,適切に選択するようになるのであろう。 第2節 更なる充実のために (1)6年間を見通したマネジメント 本研究のような実践を行うには,そもそもどの単元において児童がどの思考スキルや思考ツールを習得し,どの単元において児童に選択を委ねるのか,計画を立てることが必要になる。そしてこの計画は,6年間を見通して立てることが理想であろう。 学習指導要領を見ると,例えば国語科においては「比較や分類の仕方」とあるように,各教科等の目標や内容に思考スキルが含まれるものがある。あるいは教科書の指導書や京都市立小学校教育課程指導計画(各単元の進め方の例を具体的に示したもの)には,指導のコツとして思考スキルや思考ツールが記載されているものがある。それらを参考にしながら,どの単元にどのような思考スキルや思考ツールが有効か,想定することは可能である。そうすることで,何年生ではどのような思考スキルが必要なのか,優先順位をつけたり,選別したりすることができるであろう。その上で,1年生のときから児童の思考スキルを計画的に育むようにしていくのである。 例えば,低学年で順序立てることや分類,比較に慣れておけば,中学年ではその習得に時間を割かず,新たな思考スキルの獲得に時間を割くことができる。そうすることで高学年では,それまでに培った思考スキルを活用して様々な問題解決を行う選択活用を中心に据えることも可能である。各学年においてどのような思考スキルと思考ツールの獲得を目指すのかを整理し,学校全体で共通理解することで,より効果的・効率的に児童の思小学校 プログラミング教育 23 27

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