図4-1 K児が思考ツールを使用したノート この単元のゴールは,ある材料について,それがどのような「おいしく食べる工夫」によって,どのような食品に変化したのか説明する文を書くことである。K児は,そのことを見通して,Xチャートの項目を「早めに収穫する」「にる」などの「おいしく食べる工夫」にして,情報を整理していると考えられる。また,作り方も調べているのだが,それはステップチャートを使って順序立てられていることもノートからうかがえる。 26 あることから,更に経験を積み,より適切な方略を選択する力を鍛える必要はある。しかしながら,プログラミング的思考を含む思考スキルを,問題解決場面に応じて適切に選択する力が育まれつつあると見ることはできるであろう。 (2)転移した姿 これまで示した様々な振り返りが示すように,児童はプログラミング的思考を含む思考スキルを意識し,かつその汎用性や有効性を実感している。その結果,指導者が用意した選択肢の中で,問題解決過程に応じて適切な思考スキルを選択する児童も現れ始めている。 これらの条件を満たすとほぼ同時期に,児童が自主的に適切な思考ツールを活用しようとする様子が見られたとの報告が研究協力員よりあったので,その事例を述べる。 国語科「すがたを変える大豆」で単元の学習計画を立てる際に,各時間でどの思考ツールを使えばよいかという見通しを立てている児童が複数名いたようである。その内K児は,自分が友だちに説明したい材料について調べ,情報を整理する際,✕チャートを使っていた。K児のノートを図4-1に示す。 小学校 プログラミング教育 22 社会科「自然災害からくらしを守る」では,自然災害がいつ起こるかわからない事実から,自分たちができる災害への備えについて考える活動がある。その際,災害発生時に自身がとるべき理想の行動をステップチャートにまとめている児童がいた。そしてその手順を整理したことで,自分の家には災害時の持ち出しバックの用意や災害時の家族の避難場所の確認など,備えが十分ではないと振り返ることができていた。 また,第3章第1節(2)③(p.17)で紹介した総合的な学習の時間においても,一部の児童は,指導者からの支援なしに自主的に適切な思考ツールを選択し活用していた。 児童が問題解決の見通しをもち,理由を明確にもちながら思考スキルやそれを促す思考ツールを選んでいること,指導者からの指示なしに思考スキルや思考ツールを活用しようとしている姿があること,以上のことから本研究の手だてによって,プログラミング的思考を含む思考スキルは転移したと考えることができる。 もちろん,本研究の実践に参加したすべての児童において転移が確認できたわけではない。例えば,3年生においては,昨年度から関わっている児童にばかり自主的に活用する姿が確認されている。1年間の実践のみでは,転移にまで至らない児童もいる。だが,それも当然であろう。問題解決能力やプログラミング的思考といったものは,6年間で徐々に培う資質・能力である。次節において述べるが,6年間で育むという姿勢が必要ではないだろうか。 (3)部分的活用と振り返りの効果 プログラミング的思考を含む思考スキルの汎用性を実感させるために,教科横断的に実践を行うことにした。しかし,教科特性によって授業の中で児童に発揮させやすい思考スキルが異なるため,プログラミング的思考を分解し,思考スキルの一つとして扱い,様々な教科等の中で部分的に扱ったのが本研究の特徴である。 結果として,3年生,4年生,6年生それぞれの学年において3教科以上,単元で数えても7単元以上において思考スキルを活用する学習を行うことができた。本研究の実践は,コロナ禍の影響により学校が休校していたこともあり7月に始まり,12月に終わった。この約半年の間,児童は毎月のように思考スキルや思考ツールに触れていたことになる。この経験の量こそが,1年次の実
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