第1節 教科横断的な取組と振り返りによって (1)見通しをもって選択する姿 第4章 実践の成果と課題 (原文ママ,ただし下線は筆者) 認知である。もう一つのメタ認知であるオンライン・メタ認知を促すために,児童にどのように考えるかを選択させることを試みた。どのように考えるかという選択が委ねられることにより,児童は問題解決の過程において今どのように考えることが適切かを判断しながら活動することになる。この繰り返しが,思考スキルの転移に不可欠だと考えたからである。 本章第2節(2)②で述べた総合的な学習の時間★①(p.16表3-3参照)の活動後の児童23名に,質問紙調査を行った。質問項目は, の二つである。 上記の総合的な学習の時間における事例で紹介したG児の記述を示す。 G児はまず,下線⑧にあるように多面的に見ることで結論を考えようとしてPMIチャートを選んでいたようである。しかしながら,下線⑨にあるように多面的に見ることができなかったので,あえて全く考え方の違うピラミッドチャートを選んではどうかと方略を修正している。どう考えるかという選択が委ねられたことにより,自分は今どう考えているのか,次はどう考えればよいのかとオンライン・メタ認知を働かせながら問題解決していることがうかがえる。 そして,どう考えるかを選ぶ際には,下線部⑧や下線部⑩のように,その思考スキルや思考ツールはどのような点で良いのかという有効性が判断材料となっている。それまでの学習において,自身の思考をオフライン・メタ認知し,そこで実感してきたことが,どのように考えるかを選択する①「プログラミングとは~だ。」を考えるために,どの思考ツールを使いましたか。選んだツールに○をしましょう。 ②それはなぜですか。理由をできるだけ詳しく教えてください。 PMIチャートは⑧1つの物にちがう視点で見られるし,3つに意見を分けられるし,だめだったところや良かったところ,おもしろかった所に分けられるからです。 でも,⑨良かった所しかあまり思いつかなかったから,全ぜんちがうピラミッドチャートにしてみました。ピラミッドチャートは⑩いろいろ意見を出してみて,その中から一つに意見をしぼれるから,いいと思いました。だから,さいごは一番いい意見がえらばれるということです。ピラミッドチャートの方が,最後の意見を選びやすかったので良かったです。 (原文ママ,ただし下線は筆者) 小学校 プログラミング教育 21 (19)(20)この表は,B校校内研究の一環で作成された総合的な学習の時間の単元計画をもとに,筆者が単元の流れを簡略化して示したものである。 根拠になっていることがわかる。プログラミング的思考の転移を促すには,児童がプログラミング的思考の各要素がどのようなときに有効かを判断できるようになっていなければならない。思考の転移を目指す上ではやはり,児童が自身の思考の振り返りをすることと,どのように思考するかを選択することが重要であるといえよう。 第3章で取り上げたG児は,それぞれの思考ツールがどのような思考スキルを促すかを踏まえた上で,その思考スキルが自身の考えを絞り,主張を決めることにつながると見通しをもって思考ツールを選んでいる。 同じ質問紙調査による他の児童の記述も以下に示す。 いずれも,どのように自分の主張を決めるのか,あるいは決まっている主張をより説得力のあるものにするのか,活動の見通しをもって思考ツールを選んでいる。このように見通しをもった上で意図的に思考ツールを選び,選択した理由を記述によって表現することができた児童は23名中11名であった。G児のように一旦は選択を間違うことも【評価する:PMIシート】 ・AIにはいいことも悪いこともあることをはっきり 【抽象化する:ピラミッドチャート】 ・ピラミッドチャートを使った理由は,きょうつう することが大切だと思って,PMIシートを選びました。 するところなど最後にまとめられるからいいかなと思ったからです。いがいときょうつう点をみつけるのがむずかしかったです。 【理由付ける:くらげチャート】 ・先に,「プログラミングは~だ」を書いて,その後に思い付いたものをどんどん付け足せて理由がいっぱいかけるからです。 25
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