001総教CR30430R2研究論文(木村)
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表3-6 防災をテーマとした総合的な学習の時間 単元の流れ 図3-15 Yチャートを共同編集している画面 (H児I児J児の吹き出しは筆者) まずは,児童が知っている災害をもとに災害に対するイメージを広げていった。東日本大震災や各地で洪水などの被害を生んだ令和2年7月豪雨などが思い起こされていた。 さらに,災害を経験した方たちの話から実際の恐ろしさや経験者ならではの困りを知ったり,備えの重要性や実際に被災するまで自分事にできていないことの怖さに気付いたりしていく。 その上で,自分たちの地域に目を向けたときに,自分たちにもできることがあるのではないかと考えた児童は,みんなの命を守るために防災プロジェクトを立ち上げていくことになった。 表3-6の★は,そのプロジェクトの具体を考え,友だちと見せ合い,よりよいプロジェクトにしていく活動である。プロジェクトにおける問題解決の方向性は,前時に集めた情報を整理する活動の中で,ピラミッドチャートを使って抽象化することで決めている。 問題解決のためのプロジェクトを考えるときは,プロジェクトを複数の要素に分解してとらえ検討することが必要である。例えば,「目的,対象,方小学校 プログラミング教育 19 法」の視点でとらえることができれば,目的に対して最適な方法か,対象にとって方法が適切かなど多面的に検討することが可能となり,より適切なプロジェクトを考えることにつながる。そこで,Yチャートを使って分解(多面的に見る)の思考を促すことにした。 図3-15は,児童が一人1台もっている端末の画面である。Microsoft365のTeamsの機能を使いPowerPointを班で共有し,端末上で一枚のYチャートを共同編集できるようにした。 図3-15にH児,I児,J児がそれぞれ今どこを記入しているかを示したが,三者が同時に記入していることが見て取れる。 何らかの考えを班で1枚のホワイトボードに書き込んでいく場合,ホワイトボードの大きさの問題から,一人の児童がみんなの考えを代表して書き込んでいくことが多い。その間,話し合いが一旦停止し待っている時間が生まれたり,手持ち無沙汰な児童がふざけてしまったりということがこれまでよく見られた。しかし本実践においては,一人1台の端末を活用することで,全児童が手を止めることなく,話し合いながら同時に自分の考えを書き込むことが可能になった。思考ツールとICTを組み合わせることで,より思考ツールの活用の場が広がるということがわかる実践となった。活用の場が広がれば,思考ツールを使う機会が増え,より習熟することができたり,より汎用性を実感できたりすることにつながる。今後の情報教育への示唆となった。 第2節 思考のメタ認知の実際 (1)習得期における振り返り 第1章第1節(2)(p.6)でも述べたが,プロ23

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