なら→青を知らせる,青でなければ待つ」のように分岐しなければならないところを順次処理で書いているように,論理的には正確性を欠いたままである。この段階を小学校のゴールとしてしまうと,プログラミング教育としては不十分と言わざるを得ない。プログラムが正確でないと意図した結果を得られないというプログラムの難しさも味わい,より論理的な思考を身に付けるためにも,Scratch等のプログラミングソフトを使ったプログラミング体験を充実させることも今後の課題になるであろう。 (3)理科での取組,ICTと併用した例 ~6年生での実践から~ 表3-5は6年生の年間計画である。A校とB校では,様々な条件から実施時期や実施単元が異なる場合もあるが,概ね重なるので,紙面の関係から1枚にまとめた。他学年にはない理科の例,及びICTを活用した例を中心に述べる。 表3-5 思考スキルを育むための6年生の年間計画 ①分岐を含むアルゴリズム的思考の習得 A校の理科「水よう液の性質」では,学んだことを生かす活動として,ラベルの無い試験管に入った5種類の水溶液(食塩水・炭酸水・アンモニア水・塩酸・石灰水)を複数の実験によって区別する手順を考える活動が設定されている。 そこでA校では,単元を貫く問いとして「どうすれば水溶液を区別できるのだろうか」と設定し,各時間の振り返りにおいて,どのような区別方法を獲得したのかを児童が記述するようにした。その際に,「においがあるならアンモニア水,そうでないなら他の水溶液」のように,分岐を含むステ図3-14 水溶液を区別する実験手順 ステップチャートにして手順を可視化したことで,班での話し合いがしやすかったようだと研究協力員の感想を得た。さらには,リトマス紙を最初に使った手順とそうでない手順を比べ,リトマス紙を使うと手順が短くなることから,リトマス紙の利便性への気付きにもつながったようである。 22 小学校 プログラミング教育 18 ップチャートを用いて整理するように促したり,指導者がステップチャートの例を板書したりしている。 その上で,水溶液を区別する手順を個々人がステップチャートを使って考え,班ごとに「できるだけ少ない実験回数で水溶液を区別するにはどのような順番で行えばよいか」という視点で話し合い,よりよい手順を考える活動を行った。さらに,その手順で実際に実験を行い,班で考えた手順が適切だったかを確認するようにした。 図3-14に,児童が考えた実験手順のステップチャートを示す。 このような授業展開にすることで,自分たちが考えた手順が果たして本当によりよいものなのか,試行して評価する活動になっている。Scratchのようなビジュアルプログラミングソフトを使わないアンプラグドのプログラミング教育においては,自分たちが考えた問題解決手順が正しいのか客観的に検証することが困難なケースがある。しかし,本事例はその困難さを実験によって解消することができている。プログラミングにより問題解決ができたという喜びや,プログラムが正確でないと意図した結果を得られないというプログラムの難しさを感じさせることにつながる実践例といえよう。 ②ICTを活用した例 防災をテーマとした総合的な学習の時間を行った。表3-6に単元構想を示す(20)。
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