001総教CR30430R2研究論文(木村)
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表3-4 「未来を拓く」★②指導計画 あるグループは,視覚障がい者が信号を渡るときに困ることを解決しようとしていた。そのグループはいきなり解決策を練るのではなく,まずはイメージマップを用いて,「視覚障がい者が信号の場面で困ること」を洗い出していた。その上で,困ることが少しでも減るよう,時計にセンサーを付け信号の存在や色を感知させ,その様子を使用者に伝えるようにすればどうかと考えた。そこで,その時計の仕組みをステップチャートで考えていた。 このグループは仕組みを考えた後,さらに自分たちのアイデアを評価していた。その際にはPMI図3-13 信号を感知する時計の仕組み 児童によって情報の整理の仕方は様々であったが,3分の2の児童が自身の選択した思考ツールを使って自分なりの結論に至っていた。 またこの授業の振り返りでは,児童がどのように考えて思考スキル,思考ツールを選択しているのかが明らかになった。振り返りの分析については,次節に行う。 ③問題解決過程での選択活用 総合的な学習の時間における三つ目の探究のサイクルに当たる表3-3★②では,学んだことを生かして未来をよりよくするためのプログラムを児童が考えていく。前期の総合的な学習の時間に学んだ福祉の視点や社会科で学習した防災の視点を踏まえながら,身近な社会をとらえ,自分たちで問題を発見し,解決の方向性を考え,解決する手順の最適化を目指す。一連の問題解決過程において,これまで培ってきた思考スキルを発揮できるよう,どのように考え解決していくのかその選択を児童に委ねた。どの思考ツールを使えばよいかという選択肢は,教室掲示以外一切与えていない。詳しい流れを表3-4に示す。 小学校 プログラミング教育 17 シートを使い,自分たちのアイデアのどこが良いのか,マイナス点は何かを考えていた。出ていたマイナス点は「時計から音を出すと,雨の時に聞こえにくい」「使用者が信じてくれなかったらどうしよう」「防水でないと壊れる」などであった。 その評価を踏まえ,「雨の時は音を大きくしたらいいのではないか」や「使用者に天気を伝えて,外に出る前にイヤホンを付けてもらおう」等と改善策を考えていた。 まず問題を洗い出し,解決すべき点に焦点を当て問題を抽象化し解決の方向性を決め,解決手順の最適化を目指して評価するという,問題解決の過程を児童自らが踏んでいた。本研究において重視してきた,問題解決の方向性を考える力も育っていると考えられる。また,その過程に応じて,自分たちにとって必要な思考スキルを選択していることもとらえることができた。 一方,課題もある。そのわかりやすい例として,このグループのステップチャートを図3-13に示す。 「晴れまたはくもりなら」「信号が赤なら」などの分岐や,「信号を渡り終えたらまた信号を感知する段階に戻る」というループのアルゴリズムも取り入れたプログラムを書いている。しかしながら,「あおになる」「あおしらせ」のように,本来は「青21

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