指導者がめあてとして提示したのは,下線部①にあるように「考えを広げよう」である。そのとき指導者がしていたジェスチャーも,手を大きく広げて回すものであった。通常,考えを広げるときに使われるのは先述した図3-6(p.13)のようなイメージマップである。 図3-6は,本時より前に国語科においてこのクラスの児童が実際に作成したものである。この他にも,児童は授業中にイメージマップを使用した経験があるので,考えを広げようというめあてであればイメージマップを想起する可能性が高いであろう。しかしながら,下線部②のように児童はXチャートを選択している。下線部③からも明らかなように,その授業のめあてを達成するためにはどのように考えればよいのか,イメージをもった上で適した思考ツールを選択していると考えられる。 この授業において筆者と指導者は,Xチャートを使うように指示をする予定であった。しかし, ①抽象化の習得 国語科「新聞を作ろう」では,班でテーマを一つに絞り,テーマに沿って児童個々が書きたい材料を集めて新聞を作成する。児童にとっての最初の課題は,テーマを一つに絞ることである。児童の実態から,まずは児童個々が新聞でみんなに伝えたいことを考え,それをもとに新聞を作ることで活動への意欲が高まるだろうと考えた。しかしその場合,果たしてテーマを一つに絞れるか,合意形成ができるかが問題となる。 そこで,合意形成の手段として抽象化の思考を促すために,ピラミッドチャートの使用を計画した。つまり,児童個々が書きたいこと(下段)の共通点を見つけ出し(中段),それを班の新聞のテーマ(上段)としてもらおうと考えたのである。偶然ではあったが,児童が問題場面に応じてどのように考えればよいかを選択する姿を見ることができた。この一例から,3年生という段階においても一部の児童は,問題を解決するためにどのように考えればよいか,自身で適切に選択できると考えられる。 (2)抽象化の習得,総合的な学習の時間での選 表3-2は4年生の年間計画である。4年生では各教科等の指導事項を踏まえ,3年生で設定した分解(多面的に見る)及び,アルゴリズム的思考の他に,抽象化の思考を習得することを目指した。また,総合的な学習の時間において単元を通して選択活用を行っているので,それらを中心に述べる。 表3-2 思考スキルを育むための4年生の年間計画 択活用を目指して~4年生での実践から~ 18 を洗い出した上で,2時間目は持ち物の優先順位を話し合い,持ち物を五つに絞っていく。 まずは指導者から山に遊びに行くときはどんな活動をしたいかという話題提供が行われ,児童は口々に各自がしたい遊びを述べた。その上で,「話題に沿って考えを広げよう」というめあてが示された。そのときの指導者と児童のやり取りを以下に示す。 (児童が述べた遊びを示しながら) T「これだけたくさんのことをしようと思ったら,準備がいるよね。どんなものがいるかな?」 C(口々に意見を言う) T「もう浮かんでいるね。そんな風に①今日はいっぱい考えを広げてほしいです。」 C1「②YかX。」 C2「ああ,あれか。」(数名が同意する) (中略) T「さっき,C1が何か言ってたね。」 C1「YとX。」 T「なんで使えそうなん?」 C2「分けられるから。」 C3「持ってくるものを分けられる。」 C4「③何をするために,何が必要なのか分けられる からだと思います。」 T「じゃぁ,使ってみよう。」 C5「だったらWがいいかも。いっぱい分けられるから。」 小学校 プログラミング教育 14
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