図3-7 仕事について調べたマトリックス な要素に分解したことで,多くの児童がすらすらと文章を書くことができていた。また指導者側のメリットとして,児童の思考を可視化することで,児童がどれくらい考えることができているか見取りやすくなったことが挙げられる。例えば,視点が少ない児童には新たな視点を示す支援を行う必要があると判断することができる。 ただし,国語科のねらいとして,本当にその児童らしいその児童にしか書けない文章を書いてもらおうと思ったときに,他の思考ツールの可能性も視野に入れたい。例えば図3-6のようなイメージマップである。 図3-6 別の単元において児童が書いたイメージマップ Ⅹチャートは,児童か指導者が先に視点を設定することで,多面的に見ることができるようになる思考ツールである。どのような視点を設定するかというセンスが児童には問われる。児童らしい言葉や体験がその視点に含まれていない場合は,それらを引き出すことができなくなってしまう。イメージマップで自由にイメージを膨らませた方が,よりその児童らしい表現にたどり着けた場合もあったかと考える。 他にも,分解の思考の習得のための実践として,国語科「仕事の工夫みつけたよ」を行った。この単元では,児童は自分が興味のある職業について調べ,その職業を「どんな仕事をしているのか」「ある仕事においてどのような工夫をしているのか」「なぜそのような工夫をするのか」など仕事・工夫・理由の視点で分解してとらえ,それを報告文にまとめる活動を行う。児童にとって難しいのは,報告文に書くべき内容を踏まえて情報収集をしたり,あるいは集めた内容から報告文に書くべき内容を選択したりすることである。支援のために,マトリックスチャートという思考ツールを使って実践を試みた。C児のワークシートを図3-7に示す。 小学校 プログラミング教育 13 横軸には「わかったこと・工夫」「理由」を設定している。縦軸は空白にしておき,情報元を記入できるようにしてある。C児はトリマーの仕事について調べているが,書籍及び人から情報を得ていることがわかる。また,「工夫:カットをするとき,もしも自分がこの犬だったらこの扱いはどうだろうと思いながらカットする」「理由:犬はしゃべることができないから何かあっても伝えることができないから」と工夫と理由を関連させながら情報を集めることができている。 さらに,情報は全て付箋に書き,ある工夫とその理由は同じ色の付箋に書くようにした。本単元の指導事項が,まとまりを意識して書くことを身に付けさせることであることを踏まえ,児童がこの付箋=情報を並べながら報告文の構成を考える際に,工夫と理由を同じ段落に書くことを意識付けるようにするためである。 なお,この活動においては,分解して得た情報から必要な情報を取捨選択し順序立てるという,プログラミング的思考の一連の流れを経験させることも意図している。 社会科「工場でつくられるもの」でも思考ツールを使用した。工場見学に行った際,そこで行われていた作業工程を児童がステップチャートにまとめる活動を行った。また,工場を見学する視点として人,機械,思い,工夫などを児童に提示したり,児童が集めてきた情報をそれらの視点で整理したりするためにXチャートを使用した。算数科や国語科で使った思考ツールを社会科でも使った経験となり,その汎用性を児童に実感させることにつながったと考える。 ③選択しはじめる児童の姿 国語科「山小屋で三日間過ごすなら」の単元では,山小屋で過ごす三日間で,どのような活動をするためにどのような持ち物が必要なのか,児童は活動内容という視点で分解してとらえる必要がある。そうして1時間目に班ごとに必要な持ち物17
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