図2-6 プログラミング的思考とそれを促す思考ツー 第3章 実践の実際 ルの掲示例 14 とがわかったのか・できたのか」という観点を入れるよう指示する方法がある。思考のメタ認知を促すとともに,その有効性を実感させたり,どういうときには有効なのかを分析させたりするねらいがある。この方法は,ただ単に振り返りをしようと児童に指示するだけでは,その内容が「~がわかった・~ができてよかった」というような内容知に偏りがちなことへの改善策としても有効であろう。 (2)考え方の選択を委ねる どのように考えるかという選択が委ねられることにより,児童は問題解決の過程において今どのように考えることが適切かを判断しながら活動する。どのように考えるかを判断し選択できるようにするためには,日々の学習活動のめあてとして提示することが有効であると考える。 これは何も毎時間のように「思考ツールを使いなさい」とめあてを示すことを意味するのではない。習得期においてプログラミング的思考や思考ツールという便利なものがあると理解した児童に,「これからは使えそうな場面を自分たちで探して使ってみよう」と促すことを意味する。しかしながら,体験したプログラミング的思考やその他の思考スキル,それらに紐づけられた思考ツール全てを把握しておくことはまだ困難であろうから,これまでに活用してきたプログラミング的思考と思考ツールを教室の側面等に掲示しておく必要があろう。 また,ある思考スキルと思考ツールがどのようなときに有効なのか,判断するためのヒントが必要な児童もいるであろうから,これまでどのようなときに使ったのか,そのときはどのように感じたのかなども併せて掲示しておく必要があると考える。 例えば,算数科の筆算の学習において,筆算の手順を分解して順序立て,それをステップチャートに示したとする。そのステップチャートを用いて説明したり,その手順に従って計算することで計算の間違いに気付いたりした児童からは,振り返りの時間に「ステップチャートを使って順番を考えると,説明しやすくなった」「ステップチャートを見れば,計算の間違いに気付ける」のような感想が聞けるはずである。そういった,プログラミング的思考とそれを促す思考ツールがどんなときに有効かという児童が実感した例を併せて示すのである。実体験から出た言葉により,活用のイ小学校 プログラミング教育 10 (17)黒上晴夫,小島亜華里,泰山裕『シンキングツール~考えることを教えたい~』NPO法人学習創造フォーラム 2012.4.30 (18)文部科学省『小学校学習指導要領』2017 p.177 メージが想起されやすくなるはずである。例を図2-6に示す。 このような掲示をヒントにしながら,児童は日々どのように考えればよいかを判断しながら学習に臨む。これにより,今自分がどのように考えていて,それが問題解決につながっているかどうかというオンライン・メタ認知が働くであろう。 以上,第2章においては汎用性の実感と思考の習熟,そしてメタ認知を促すという三つの柱に沿って五つの手だてを述べた。これらの取組を通して児童のプログラミング的思考が転移したのか,検証していく。 本研究における授業実践は,A校3年生1学級,6年生1学級,B校4年生1学級,6年生1学級で実施した。A校両学年は昨年度一年次の研究において実践した学年であり,児童のうち半数は,昨年度からの積み上げがある。B校については昨年度から校内研究として思考ツールの活用を進めていた学校であり,思考ツールに関して全く初めて触れるというわけではなかった。 第1節 教科横断的な取組の実際 プログラミング的思考を含む思考スキルの習得を図りつつ,その汎用性を児童が実感できるよう,教科横断的な計画を立てた。以下,各学年の年間計画を示す。表中の【 】はその単元で働かせてほしい思考スキルを,( )はその思考スキルを促
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