図2-5 プログラミング的思考および思考ツールの習得と選択活用の流れ ラミング的思考を育んでいるとはいえない点に注意しなくてはならない。これまで示してきたようにプログラミング的思考は問題解決の方向性を考え,問題解決の手順を最適化するためのものであり,例えば分解の思考のみでは問題解決に至ることができない。部分的に活用してきたプログラミング的思考を総動員して問題解決するような体験が,各教科等において必要である。このような場合の一つとして,総合的な学習の時間が有効だといえるのではないだろうか。 (3)思考の習得から活用へ 総合的な学習の時間の基本的な流れには,第1章で述べたようにプログラミング的思考の複数の要素が含まれており,問題解決の方向性を考える力を発揮する場面が設定しやすいという特性がある。また,様々な教科等と関連することから,汎用性の実感にも寄与するであろう。 さらには,地域の防災や環境問題など大きなテーマが取り扱われることも重要である。その大きな問題をどのようにとらえ,どのように解決しようとするのかの意思決定は児童に委ねられることになり,児童は正に自分自身の力で主体的に問題解決を図ることになる。そうすることで実際に問題解決に至った時の達成感は大きいものになるであろう。また,その解決にプログラミング的思考が活用されていたと気付くことができれば,その有効性を実感することにつながるはずである。本研究で目指すプログラミング的思考の汎用性と有効性の実感,問題解決能力を支える思考としての意識化のために魅力的な活動となり得るであろう。 なお,現行小学校学習指導要領には,「探究的な学習の過程においては(中略)例えば,比較する,分類する,関連付けるなどの考えるための技法が活用されるようにすること」(18)と示されている。ここでいう考えるための技法とは,思考スキルのことである。思考ツールによってプログラミング的思考を中心とした思考スキルの発揮を促そうとする試みは,総合的な学習の時間が目指す学習と合致するものになるであろう。 では,部分的活用の効果や総合的な学習の時間の特性を踏まえ,どのようにカリキュラムを構築すればよいのか。図2-5のようなモデルを提案したい。 研究の前半はプログラミング的思考や思考ツールに慣れるための習得期であると考える。児童全員が慣れる必要があるため,どのような思考をす小学校 プログラミング教育 9 ればよいか,そのためにどんなツールを使えばよいのか,指導者が明確に指示する。 この明確な指示とは,授業中のめあてとして指導者側から提示することを必ずしも意味しない。児童にどのように考えたいかを問い,児童の案をより実現しやすくするための便利なツールとして紹介することもできる。あるいは,児童が行っていたプログラミング的思考や思考ツールを使った活動を取り上げ,価値付けた上で全体にやってみるよう促す場合もある。 後半期は,選択活用期と位置付ける。問題解決のために様々な思考があり得る中で,どのような思考をすればよいのか,そのためにどんなツールを使えばよいのかという選択はできるだけ児童に委ねる。指導者がそれを全体に明確に指示することは少ない。 プログラミング的思考の複数の要素が含まれることから,総合的な学習の時間でのプログラミング教育は選択活用期に設定している。総合的な学習の時間以外の教科等であっても選択活用のための単元として適しているものがあれば,この時期に設定している。 このような選択活用の時期を設定する意図は,転移を促すために,児童に自身の思考をメタ認知させることにある。 第2節 思考のメタ認知を促すために (1)定期的な振り返り 考え方の選択を委ねる前提として,ある考え方がどのようなときに有効なのかを児童自身が実感している必要がある。そのような実感を促すための手だてとして,習得期においてオフライン・メタ認知を促すことが考えられる。 方法の一つとしては,授業の終末に行う振り返りに「どのように考えたのか」「その結果どんなこ13
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