001総教CR30430R2研究論文(木村)
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図2-4 評価の思考に対応するPMI 12 報の集まりで,上段に行くほど情報は省かれ抽象化されていく。 図2-3 ごみ問題を抽象化するピラミッドチャート 例えば図2-3ではまず,多くの要素を並べ(下段),それらの共通点を考えている。そして,ごみ問題の原因は使い道があるのに捨てていることと,ごみを減らす活動は面倒であることだと抽象化している(中段)。そこで,使い道があるものを再利用する方が手軽だったりお得だったりすると伝えることが必要だとの主張を導いている(上段)。 共通点を導く以外にも抽象化する際の観点はあり,自分たちでは解決できない要素を省くこと,切迫度合いや重大さなどで選択することもあり得る。 ③アルゴリズム的思考・一般化 アルゴリズム的思考は思考スキルでは順序立てることに当たる。順序立てる思考を可視化し促すには,ステップチャートや短冊・矢印が用いられる。図1-1(p.5)がそうである。 ステップチャートを構成する一つ一つの部品は,問題解決に必要な動きを細分化したものであり,この部品を考えること自体は分解の思考にあたる。つまり,ステップチャートに手順を示すことによって,アルゴリズム的思考と分解の思考が働いていると考えられる。 なお,一つ一つの部品を短冊や付箋に書き,操作しやすくすることもできる。その方が,順番を入れ替えることや,手順の一部を他の問題解決の手順に移すことが容易になり,手順を評価し,よりよい手順を目指したり,一般化の思考を働かせたりしやすくなる。 ④評価 評価とは,実行したことが目的や意図に対して最適かを確認し,修正・改善していく思考である。例えば,お題が与えられておりビジュアルプログラミングソフトを使って解決するのであれば,プログラムを実行すれば目的や意図に対して適しているかわかりやすい。しかし,そうではない場合,小学校 プログラミング教育 8 例えば人にプレゼンで何かを伝えるといった場合,本当に適しているかは短時間で見ただけでは判別できず,作った自分自身では客観的な判断をしにくい。友だちに見てもらい意見をもらった上で改善するかどうか判断する必要があろう。その際に使用する思考ツール,PMIを図2-4に示す。 問題解決手順を見てもらったり,あるいは実際に試してもらったりした後,この思考ツールを用いて相手に評価してもらう。いいところは変更する必要はなく,逆にだめなところは改善が必要であると判断できる。また,おもしろいところはその問題解決方法の強みや価値である。より高めることでよりよく問題解決することにつながるかもしれない。この評価をもとに最適化を目指すことができる。 (2)部分的活用の可能性 本来,プログラミング的思考は物事をいくつかの要素に分解し,分解された要素をもとに解決方法の方向性を決め,その方向性や要素を踏まえて解決手順を構築していくという一連の流れを指すのかもしれない。しかしながら,小学校教育においてはその一連の流れがすべて含まれる授業ばかりではない。分解の思考は働くのだが,アルゴリズム的思考は働かない授業もある。 例えば,理科において植物を多面的にとらえて観察し,その変化をつかむ活動がある。植物を葉,茎,根,実などのように多面的にとらえることは,複数の要素に分解しているといえよう。 このようにプログラミング的思考の一要素が発揮される授業があるのであれば,プログラミング的思考(の一部)を育む機会であるととらえ,プログラミング教育のカリキュラムに取り入れていきたいと考えている。そうすることで,プログラミング的思考や思考ツールを活用する機会が増え,児童にプログラミング的思考の汎用性を実感させるとともに,より習熟させることにつながるであろう。 ただし,このような部分的活用のみではプログ

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