602_R4「教育研究の方向性」最終稿【総論】
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① 算数・数学科における、課題を選択し自立的に学び合う授業の提案 どもの多様な能力や個性を生かし、また、これまで十分に発揮できなかった能力を開花させ、社会の中で活躍できる可能性を広げられるよう、学校が家庭・地域社会と連携しながら、子ども一人一人に丁寧に寄り添った行動を徹底するとともに、個に応じた適切な配慮や支援を充実させていくことだとされている。また、これからの教職員の姿として、教職員は子どもの主体的な学びを支援する伴走者として、教職員自身が社会の変化を捉えながら、自律的かつ継続的に、そして探究的に学び続け、人間性や創造性、専門性をより高めていく必要があることを示している。 より多様化が進む子どもたちを誰一人取り残すことなく、これからの時代に必要となる資質・能力を確実に育成することと、そのための教職員の指導力の向上が本市の学校教育にも求められている。 (3)研究課が進める教育研究 本年度の研究課では、前述した教育課題の解決と次代に求められる資質・能力の育成を目指し、以下の研究領域を設定した。また、今後もICTを文房具として活用できることが前提となる教育活動が推進されていくことは明らかであり、各研究実践にはGIGA端末を活用した教育活動が随所に組み込まれている。情報や情報技術を活用する力である情報活用能力は、全ての学習活動の基盤となる必須の資質・能力として既に位置付けられている。 <個別最適な学び及び協働的な学び> 令和の日本型学校教育を実現する上で「個別最適な学び」と「協働的な学び」は重要な要素となる。「個別最適な学び」とは個々の児童生徒に応じて指導方法・教材や学習時間等を柔軟に提供し設定する「指導の個別化」と、児童生徒が自らの興味・関心等に応じて学習を進めていく「学習の個性化」を学習者視点から整理した概念である。また、「協働的な学び」とは多様な他者と協働しながら、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、様々な社会的な変化を乗り越え持続可能な社会の創り手となるための資質・能力を育成するために必要なものだとされている(7)。 この概念を具体化した授業を提案することが、現場で試行錯誤されている先生方の実践のヒントとなるにちがいないと考え、研究実践に取り組んだ。 小学校算数科では、単元全体や単元内の何時間かの学習の進め方を児童に委ね、自分で学習の計画を立て、取り組む課題や学習道具、学習形態等を選択する授業実践を行った。自分の興味・関心や学習の理解に合わせて自分のペースで学習を進めつつ、児童一人一人が自立的に学習目標を達成できる授業デザインによって、資質・能力を着実に育成することを目指した。 中学校数学科では、1時間の授業の中に設定している課題解決の時間において、学習道具、学習形態等を生徒が自己選択する授業実践を行った。また、単元末の授業では生徒が学習課題を自己選択する機会も設定した。これにより、生徒一人一人の学習意欲を高め、より自立的、協働的に学習を進めていくことを目指した。 ② 家庭学習と授業の相互で目指す学習を自己調整する力の育成 社会の変化に主体的に対処していくためには、課題の解決に向かっていくための動機づけ、自身の状態を正確に理解するためのメタ認知、課題を解決するための方略の三つの要素を備える必要がある。本年度は学習課題を解決するための方略(学習方略)の自己選択と振り返りを実践の軸として、家庭学習だけではなく授業の場面でも実践を行った。 学習を自己調整する力を育成するためには、指導者が学習方略を指定するのではなく生徒が自己選択することが重要である。その際に生徒はメタ認知を働かせ適切な学習方略を選択し、学習の成果を実感することができれば、動機づけを高めた状態で次の学習に向かうことができる。指導者から方略の選択を委ねられた生徒は他者からのアドバイスを取り入れたり、学習を調整した自らの経験を活用したりしながら、学習を自己調整していく。また、生徒は方略の選択という自己調整の経験を振り返ることで、自覚をもって方略を汎用的に活用することができると考え、家庭学習と授業の場面で相互に自己調整す教育研究の方向性 2 3

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