616_R4「個別最適な学び」と「協働的な学び」最終稿【椙村・寺井】
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小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 7 図2-2 子どもが選択する学習課題例 または発見した場合、子どもたちは教室の外で学習を進めることになるだろう。 このように、学習する場所を自己選択・決定できることで、自分に適した条件で学習を進められるだけでなく、日常生活の中でも数学的な見方・考え方を働かすことができるようになると考える。 ○柔軟な学習時間の設定 子ども一人一人の学習の定着度や、計算の速さなどは様々である。また、選択または発見した学習課題の難易度によって、解決に要する時間も様々である。そのため、指導者が一斉に時間で学習活動を区切ることをできる限り少なくし、子どもたち自身が学習時間を調整できる授業デザインにする。本研究では、昨年度の算数科で提案した図1-3(p.3)の授業デザインを算数科・数学科の両研究で取り入れる。基本的に、「自力解決」と「学び合い」の時間の中で自分に適した学習方法を自己選択・決定できるようにする。さらに本年度は、子どもたち自身が調整する学習時間は、1時間の授業の中の10分間、20分間といった短い時間から、段階的に、1時間もしくは単元の2~3時間、単元全体といった長い時間で設定する。 子どもに学習活動を委ねる時間に幅をもたせることで、自身の学習内容の定着度や選択または発見した学習課題の難易度に応じて、子どもたちは様々な学習方法を試しながら学習課題を解決していくことができるであろう。また、委ねられた学習時間や期間が長くなるにつれて、どのように学習を進めるか、時間や順序の見通しを立てたり、自分に適した学習方法で学習を自己調整したりするだろう。このような学習経験によって、一人一人の資質・能力をより高め、自立した学習者へと育むことができると考える。 ◇学習方法の自己選択・決定で留意すべきこと 「何を使ってもいい」「誰と学習をしてもいい」と指示を出しただけでは、学齢とは関係なく自己選択・決定に慣れていなければ、教科書や友だちの答えを写すだけでその時間を終えたり、そもそもどんな選択肢があるのかすらわからなかったりするものである。学習方法を自己選択・決定できる授業をつくっていく際には、初期段階からあまり多くの選択肢を子どもたちに与えないように留意したい。選択した“もの”はどのように使えばよいのか、誰(“人)とどのように学習を進めれば学びが深まるのか、といった自己選択・決定する学び方を徐々に積み上げていなければ、効果的な学びにはならないだろう。まずは、「わからなければノートを見て学習を振り返ってみよう」「絵や図を使って理由を説明し合うとよくわかるね」と指導者が学習の方法を教えたり、子どもが選んだ方法を価値付けたりすることが大切である。そして、子どもの学習経験や発達段階に応じて、段階的に自己選択・決定できる範囲を広げ、委ねる時間を伸ばしていくようにする必要がある。 (2)一人一人に応じた学習課題の提供 「学習の個性化での問題発見・解決プロセス」では、オーセンティックな学習課題を子どもの興味・関心や学力層に合わせて複数提供する。また、そこでの問いは、「全体での問題発見・解決プロセス」で育まれた数学的な見方・考え方を働かせ、獲得した知識・技能を活用する必要のあるものにする。ここでは小学校算数科の4年生「垂直・平行と四角形」での例を挙げる。 この単元では、平行や垂直の定義とかき方を学習する。また、それらを生かし平行四辺形や台形、ひし形などの性質も学習する。「全体での問題発見・解決プロセス」で身に付けるべき力を付けた後、「学習の個性化での問題発見・解決プロセス」に入る。そこで提供するオーセンテ41

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