第1節 「学習の個性化での問題発見・解決プロセス」における「個別最適な学び」の手法 小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 5 第2章 課題を選択し自立的に学び合う姿を目指して (1)中央教育審議会『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して』2021.1.26 p.1 (2)文部科学省『学習指導要領の趣旨の実現に向けた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料』2021.3 pp.7-8 (3)前掲(2) p.10 (4)文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編』2017.3 pp.7-9 (5)文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編』2017.3 pp.23-24 (6)国立教育政策研究所『令和3年度全国学力・学習状況調査報告書 小学校算数』 pp.8-10 (7)国立教育政策研究所『令和3年度全国学力・学習状況調査報告書 中学校数学』 pp.8-10 (8)京都市教育委員会・京都市総合教育センター『令和3年度研究紀要』2022.3 pp.59-82 (9)前掲(8) pp.83-101 また、「指導の個別化」によって、子どもたちは、GIGA端末を活用しながら一人で学習を進める方法や友だちと考えを深める方法など、学び方を学ぶ経験を積み上げてきた。そこで本年度は、「学習の個性化での問題発見・解決プロセス」も取り入れた「個別最適な学び」と「協働的な学び」となる授業を提案し、子ども一人一人の資質・能力を一層高めることを目指す。 算数科・数学科の「学習の個性化での問題発見・解決プロセス」において大切なことは、学習したことによる子どもの新たな気付きや疑問、興味・関心をもとに、新たな課題を見つける力を育み、学びを深め広げていくことだと考える。課題を見つける力は、複雑化・多様化する社会において新たな価値を生み出していくために必要な力である。この力を発揮するためには、授業で育んだ数学的な見方・考え方を、教科の中だけでなく、日常生活など実社会の中でも働かせられるようにすることが求められる。 しかし、奈須によると学習したことは文脈や状況に強く依存しているため、学習用に文脈や状況を捨像した課題で得た知識は、現実の問題解決には生かすことができないとしている(10)。全体での問題発見・解決プロセスで扱う学習課題は、現実や数学の世界にあるものを学習用に簡略化したものが多い。それゆえ、全体での問題発見・解決プロセスで働かせた数学的な見方・考え方や学習したことは、他の文脈や社会生活の中では生かすことができないことが考えられる。そこで奈須は、具体的な文脈や状況を豊かに含んだ本物の社会的実践への参画として学びをデザインしてやれば、学び取られた知識も本物となり、現実の問題解決に生きて働くと考え、これをオーセンティックな学習としている(11)。 そこで、本研究では、授業で取り扱う問題や学習課題を、現実社会の文脈に近づけた課題(以下、オーセンティックな学習課題と称する)にすることによって、日常場面や社会でも働く数学的な見方・考え方を伸ばし、課題を見つける力や解決できる力を育むことができると考えた。 オーセンティックな学習課題は、「学習の個性化での問題発見・解決プロセス」で提供する。その他にも、1時間の授業や単元等の終盤で、子ども自身の気付きや疑問、興味・関心をもとに新たな学習課題を見つけていく問題作り等の活動を取り入れ、日常場面や社会で働く数学的な見方・考え方を伸ばし、学びを深め広げられるようにする。 「学習の個性化での問題発見・解決プロセス」の学習課題は、一人一人が選択または発見したものであるため、当然一つの教室の中で学びの複線化が起こる。また、選択または発見した学習課題の難易度や子どもの実態によって解決に要する時間が異なり、学習進度にも違いが出てくるだろう。そのため、授業をデザインする際には、全体での問題発見・解決プロセスと同様、一人一人に応じた学習方法や柔軟な学習時間を設定していくことが必要である。 そこで本研究では、以下の2点を取り入れた「個別最適な学び」と「協働的な学び」となる授業を提案し、一人一人の資質・能力を高めることをねらいとする。 39
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