支援する場合が多いだろう。ただ、既に理解できている子どもや、それ以前につまずいてしまっている子どもは、その学習課題に取り組む必然性を見いだせないことが多い。児童シのように、学習課題を選択できることによって、学習意欲が高まった子どもがいたことがわかる。全体での問題発見・解決プロセスでの選択課題は、基本的に教科書の問題をベースとしたものであり、学習の個性化での問題発見・解決プロセスでの学習課題は単元で学習したことを生かす必要のあるものとなっている。そのため、どの学習課題を選択しようとも、教科の目標は達成できるのであるが、「学習課題を自己選択」できることにより、主体的に学ぶ姿勢も育むことができるということが明らかになった。また、生徒スや児童セのように、主体的に学習に取り組むことが、学びを深めることにつながった子どももいたといえそうである。 ②日常場面や社会生活でも働く数学的な見方・考え方 図4-6に示すのは、実践前と実践後に「算数(数学)で学んだことがこんなときに『生かせるな』『役に立つな』と思うときはありますか」という質問内容でアンケートを行った結果である。算数科・数学科共に、実践前と比べて「ある」と回答した子どもが増加した(小:15人増、中:50人増)。 実践前に「ある」と回答した子どもの記述をみると「買い物での計算(算:16人 数:12人)」と答える子どもが一番多かった。他の回答をみると、「料理のとき」「ものを分けるとき」「濃度を求めるとき」といった、「算数、数学=計算」という捉え方をしていると読み取れる回答が多く、具体的に何が生かせるのか、役に立つのかといった記述があまり見られなかった。つまり、学んだことを生かせる、役に立つというよりも、計算が必要な場面を思い出して回答しているように思われる。 次ページ図4-7に示すのは、実践後に「ある」と答えた子どもたちの回答の一部である。児童ソや生徒タのように、他教科での学習や部活動の場面など、具体的な場面で学んだことが生かせると答える子どもたちが増加した。児童チや児童ツ、生徒テは経験のないことでもオーセンティックな学習課題を解く中で社会生活をイメージし、学習したことが役に立つと考えたのだろう。さらに、児童ト、生徒ナの回答からは、自分の夢や将来に学びをつなげていることがわかる。オーセンティックな学習課題に取り組んだり問題作りをしたりする中で、学んだことを何かに生かせたり、役立てることができたりするのだろうかと思いを巡らせた結果なのであろう。まだまだ「算数、数学=計算」と捉えている子どもたちもいるが、本実践を通して、日常や社会生活でも働く数学的な見方・考え方が育くまれつつあるといえそ小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 31 (下線は筆者による) 図4-5 アンケート結果⑤ 図4-6 アンケート結果⑥ 【課題選択できるよさ】 児童コ:私はよかったです。なぜなら勝手に難しい問題をとくと決められてしまったら、難しすぎて問題がとけなくなってしまうからです。でも自分に合った問題を解けるので私は良かったです。(小4) 生徒サ:自分のレベルに合わせて勉強を進めることができるから、例えば、一回解いてみて次行けそうやなとなったら次行ったりとか、柔軟な勉強ができるからすごくいいなと思いました。(中3) 児童シ:課題選択できるのはよかった。自分が興味を持った課題だと決められた課題よりも「やりたい!」という好奇心が増すんじゃないかなと思います。(小4) 生徒ス:誰かと同じ課題に対して取り組み互いに意見を出し合うことで、役割の分担をして速く解くことができたり、自分になかった(一人では考えていなかった)ような考え方を(教えて)もらうことができたことがよかった。またタブレット端末を使って考えると、過去の(学習)内容(を取り出すこと)や実際に調べて考えることができてより良い考え方を出せた。(中3) 児童セ:よかったです。理由は、自分で選択することで自分が足りないと思ったものも補えるし、自分たちで選んで 理解や考えを深められるからです。(小6) 65
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