616_R4「個別最適な学び」と「協働的な学び」最終稿【椙村・寺井】
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(2)一人一人に応じた学習課題による子どもの変容 ①課題選択できるよさ 小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 30 ②授業デザインによる確かな学び 図4-3に示すのは、実践前と実践後に「算数・数学の授業では、どのようなことを考えながら学習を進めていますか」という設問で行ったアンケート調査の結果である。その項目の中の一つで「『まず』『次に』といった言葉を使うなど、人にわかりやすく説明できるようにする」という項目を選んだ子どもは、小学校・中学校共に増加した(小:9人増、中:12人増)。また、「自分の考えを人に説明できますか」という質問内容でアンケートを取ったところ、「『式と言葉』または『図や表、グラフなど』を使って自分の考えを人に説明できる」と回答をした子どもは、実践前と比べ、小学校・中学校共に増加した。(小:1人増、中:18人増)。中学校に比べ小学校での人数の増え幅が小さかったのは、小学校では昨年度の実践ですでに増加していたため、今年度の人数の大幅な増加にはつながらなかったからであろう。今後、自分の考えを説明できる子どもをどのように増やすかという課題はあるが、60%以上の子どもたちが、順序立てて他者に説明することができるようになったといえるだろう。 実践後に、「学習方法を選択できる授業によって、算数(数学)としての力がついたと思ったこと」について聞き取りを行った。その回答の一部を図4-4に示す。児童キは、自分のペースで学習できることにより、自分の考えをわかりやすくまとめることや、よりよい説明にするにはどうすればよいかを考えることができたようである。児童クは、何度も友だちに聞けることで、自分が理解できるようになったということが読み取れる。生徒ケのように、他者の考え方から多様なアプローチができることを学ぶなど、これまでの自分の考え方とは異なる見方・考え方ができるようになったことがわかる。 学習方法を自己選択・決定できることや、自分のペースで学習を進めることができる授業デザインによって自分に適した学び方を学ぶことができるとともに、「協働的な学び」にもつながった。そして、第3章の図3-8(p.14)や図3-15(p.21) 図3-18(p.22)に示すように、言葉に加えて式や図、表、グラフなどを用いて自分の考えを根拠を示して説明する活動を通して、算数・数学の力が高まったと思われる。 実践後に、子どもに「課題選択できるのはよかったか」という質問内容で自由記述のアンケートを行ったところ、約96%(小:73/77、中:143/147)の子どもたちが肯定的に捉えていた。その回答の一部を次ページ図4-5に示す。児童コや生徒サの記述からは、自分の理解度に応じて学習を進められることがよかったということが読み取れる。学習課題が一つの場合でも指導者は一人一人の理解度に応じて指導児童キ:今まで、先生が話していて次いくよ、と次々いくので、早く追いつかないと、と思っていたけれど、自分のペースでできるから説明もわかりやすくかけるし、説明が長かったら説明されている方もよくわからなくなるので、(自分の考えを)ノートに書くときに、こうしたらいいのかな、ああしたらいいのかな、と考えることができるようになった。(小4) 児童ク:友だちとやっていたら、いろんな意見が出るし、その意見の意味がわからなかったらわかるまで何度も聞けるし、教える人も説明する力がついたと思う。(小6) 生徒ケ:一つの解き方ではなくいろんな解き方があったので、僕は式で考えるのが好きだけど、図やグラフで考える人がいて、いろんな見方が学べたのでよかった。(中3) 太字:授業デザインによる学び方のよさ 下線:教科としての資質・能力が高まったと捉えることができる記述 図4-3 アンケート結果③ 64 図4-4 アンケート結果④

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