616_R4「個別最適な学び」と「協働的な学び」最終稿【椙村・寺井】
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【実践前】 ・自分の好きな計算の仕方で解く(小4) ・問題を解きまくる(小6) ・ひたすら問題を解いて、問題に慣れていく(中3) 【実践後】 (わかる・理解できる) 児童ア:まず自分で考えて教科書を見ればいいと思いました。理由は教科書が一番正確にわかるから。(小4) 児童イ:まず、自分で問題を解いて、分からない人がいたときに、その人に説明するやり方 ⇒自分が本当に理解できているか確かめられるから。きちんと理解できていないと、人に説明することはできない。(小6) 生徒ウ:たくさんの視点を持てたので、友だちの考えを聞いてから、自分でじっくり考える学び方が自分の力がついたと 思えた。(中3) かるから(小4) 児童オ:簡単な問題などは、複数の人とやると逆に時間がかかってしまうので、一人でやって、難しい問題は友だち(二人)とやる学び方が僕は自分の力がつくと思う。なぜなら、お互いに教えあったり、友だちの考えを知ることが出来るので、自分の考えを深めることが出来ると思うから。(小6) 生徒カ:話し合い活動がよく理解できると感じる。なぜなら、数学の得意不得意がある中で、みんなの意見を聞くことで、こんな考え方もあるんや、とか、この前習ったこれと似てるな、とか新たな気づきができて、より柔軟な考え方で物事に取り組めるようになるから。(中3) 太字:自己選択した学習方法 下線:選んだ学習方法によって得られた学び 小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 29 (考えが広がる・深まる) 児童エ:説明などを考えてから友だちと話し、ロイロノート(学習支援ソフト)を見ること。そうすることで自分とちがう意見もわ図4-2 アンケート結果② 図4-2に示すのは、「ある」と回答した子どもに理由を尋ねたところ、実践前に「自分に合った学び方がある」と回答した子どもたちの内容は、与えられた問題を解くことができるようになることを目的とした学び方の記述が多かったが、実践後は「理解できる」「考えを深められる」といった 学習方法を自己選択したことによって、自覚的に学べていたと思われる記述が多くみられた(「小学校:(65人/77人)中学校:(82人/128人)」。 児童アは、言い換えるならば、教科書という学習道具を活用することが自分に適した学び方であると考えている。児童イや生徒ウの記述からは、他者と説明し合うことが一番理解できると読み取れる。もし指導者が学習方法を全員に指示するとした場合、初めから友だちに考えを聞きに行くことをよしとすることは少ないだろう。しかし生徒ウは、まず人に聞いてから自分の頭で整理する方が自分の力になると答えている。理解するために同じ学習形態を選択したとしても、そのタイミングや学び方など、子どもによってその効果はそれぞれ異なる。児童エや児童オの記述からは、GIGA端末や二人学びなど、選択した学習方法は違うが、協働的に学ぶことで考えが広がっていることが読み取れる。児童オは学習課題の特徴に応じて学び方を選択していることも読み取れる。生徒カは数学が得意ではない友だちと話し合った場合も、新たな学びにつながると気付いている。正に、「協働的な学び」となる学び方を自分で理解し、自らの判断でその学習方法を選択していることがわかる。 以上のように「教科書を読めば正しく理解できる」「自分の考えをもってから友だちと交流すれば考えが深まる、いろいろな考え方を知ることができる」といった“理解できる” “考えが広がる・深まる”といったことを目的とした「学び方」を学ぶことができているといえるだろう。 実践後にこのような記述が見られるようになったのは、学習方法を自己選択できる授業デザインにしたことや、毎時間自分の学び方を振り返る場を設定したからであろう。そしてその裏返しで、自己選択する機会がない授業デザインでは、子どもたちはいつまでも、与えられた課題を解くことが目的となるような受け身の学び方しかできないともいえるだろう。本研究での「個別最適な学び」や「協働的な学び」とは、子ども自身が学ぶことができたと実感したときに初めて「学び」になると捉えている。子どもたちは研究実践を通して「わかる、理解できる、考えが広がる・深まる」といった「学び」を実感し、「学び」とは何かを理解した上で自分に適した学び方で自立的に学び合うことができるようになったといえるだろう。 63

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