616_R4「個別最適な学び」と「協働的な学び」最終稿【椙村・寺井】
3/37

第1節 「個別最適な学び」と「協働的な学び」とは 「指導の個別化」 ・一定の目標を全ての児童生徒が達成することを目指し、個々の児童生徒に応じて異なる方法等で学習を進めること。 →教師が支援の必要な子供により重点的な指導を行うことなどで効果的な指導を実現することや、子供一人一人の特性や学習進度、学習到達度等に応じ、指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行う。 「学習の個性化」 ・基礎的・基本的な知識・技能や問題発見・解決能力等、学習の基盤となる資質・能力等を土台として、個々の児童生徒の興味・関心等に応じた異なる目標に向けて、学習を深め、広げること。 →興味・関心・キャリア形成の方向性等に応じ、子ども自身が学習が最適となるよう調整する。 小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 1 筆者により一部編集 第1章 研究主題について 図1-1「指導の個別化」と「学習の個性化」の相補性 (1)「個別最適な学び」と「協働的な学び」の必要性 複雑で予測困難な変化の激しい社会の中で、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となれるよう、子どもたちを育てていくことがこれからの教育に求められている。そのために、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して(答申)」では、平成29年告示の学習指導要領で整理された「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の三つの資質・能力を確実に育成し、全ての子どもたちの可能性を引き出す「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現を目指すことが示された(1)。 「個別最適な学び」とは「個に応じた指導」を学習者の視点から整理した概念であるが、一人一人に応じた多様な教材、柔軟な学習時間、学習方法等の提供・設定によって学力を保障し、自分に最適な学びを自力で計画・実行できる子どもを育むことである。そして、「協働的な学び」によって一人一人の良い点や可能性が生かされ、学びが深まるとともに、他者を尊重する姿勢等も育まれていく。「個別最適な学び」と「協働的な学び」となる授業は、各教科等の目標を達成するための手法であるにとどまらず、他者と共に能動的に学びを深めることのできる「学び方」そのものを学ぶためのものでもある。 学級には、黙って考え続けるよりも、手や体を動かしたり、口に出したりする方が学習を進められる子どももいるだろう。また、子どもによって学習の理解度や学習進度は異なる。このように多様な子どもが在籍している学級だからこそ、一人一人に合った学習課題や学習方法を自己選択・自己決定できる「個別最適な学び」や、様々な視点や考え方で学びを深めることのできる「協働的な学び」が必要なのである。「個別最適な学び」と「協働的な学び」によって、子ども一人一人が学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて深く理解し、生涯にわたって能動的に学び続け、人生や社会を豊かにすることのできる力を身に付けていくのである。 (2)「個別最適な学び」を段階的に 「個別最適な学び」は以下に示す「指導の個別化」と「学習の個性化」の2点で整理されている(2)。 「指導の個別化」と「学習の個性化」には段階的な指導が必要だと考える(図1-1)。その例として、算数科における「学習の個性化」について考えてみたい。 例えば、子どもが修学旅行で市内をグループ単位で行動するときに、どのような乗り物を使い、どの順番で回るのかを考える学習課題を設定したとする。その場合、バスや電車等のどの交通機関を使うとよいのか、寺社等の施設はいくつ回れるのかなどを時間や予算から判断していくことにな35

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る