616_R4「個別最適な学び」と「協働的な学び」最終稿【椙村・寺井】
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小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 27 図3-30 (左) 1㎜分の枚数で考えた児童Hの考え (右)「枚数」と「重さ」で考えた児童Iの考え(GIGA端末) 児童J:自分で比例の関係や変わらない数は何かに着目して考えた。友だちと意見を交流すると考えを深めることができた。練習問題などは自分のペースでやって、発展問題など考えを広げるためには友だちとやる方がいいと思った。 児童K:自分から聞きに行ったり、タブレットで共有された友だちの考えを見たりして学ぶことができた。次も同じ ようにいろいろな友だちに聞いてみようと思った。 児童L:発展課題1では、比例(の考え)を使えばいちいち数えなくても簡単に数えることができることが学べた 図3-29 チラシの厚さを測る児童の様子 え方としてはおおよそ合っていたことを確認していた。 少し遅れて発展課題1に取り組んだ児童は、もっと正確な分け方はできないかと考えていた。児童Hは「チラシの枚数」と「チラシの厚さ」が比例の関係になっているという見方は同じであっても、1㎜の厚さ当たりの枚数から、一人当たりの数量を求めることができると考えた。児童Iは別の見方をし、「チラシの枚数」と「チラシの重さ」が比例関係であると考えた。単元全体課題選択学習では学習進度が一人一人違うため、ある児童が学習課題に取り組む前に、既に他の児童が解決を終えている場合がある。しかし、児童は解決し終えている友だちの考えを真似するのではなく、自分なりの数学的な見方・考え方を働かせて解決するようになっていたのである。児童Hや児童Iはそれぞれ厚さや重さをはかり、一人当たりの分量を計算で求めた(図3-30)。実際の枚数を数えたところ、児童Hの考えは誤差1枚、児童Iの考えは誤差なしという結果であった。指導者は、授業の終末にそれぞれの児童の考え方や解き方などを全体で共有し、児童の学びを価値付けていた。 第11時には全ての児童が確認問題を終え、発展課題や問題作りに取り組んでいた。指導者は授業の終末に、比例の学習で学んだことや、自分に適した学び方について振り返る場を設けた。第12時から第15時までは反比例の性質やグラフのかき方について全体で学習を進めた。第16時と第17時は、反比例の確認問題を終えた児童から、発展課題に取り組んだ。 単元の終わりに、発展課題の内容も含めてどのようなことを学ぶことができたのか振り返ったところ、以下のような回答を得られた。 児童Jや児童Kは、一人で考えたり、友だちと交流したりする中で、どのような学び方がよいのかを学ぶことができていたことが読み取れる。本単元では8時間近く児童に学習を委ねた。学習がうまく進まない、深まらないといった経験も含め、毎時間自身の学び方を振り返る中で、自分に適した学び方というものを学ぶことができたといえそうである。児童Lは、発展学習によって学習したことが日常生活で生かせることだけでなく、実際に測ったり数えたりしなくても、計算することで得たい数値を求めることができるといった、算数(数学)のよさに気付くことができていたといえそうである。 本実践で、児童はある程度自分に適した学習方法で学習を進めたり、指導者が適切な個別支援を行ったりできたのは、児童と指導者それぞれが、学習を自己調整する経験や児童に委ねる経験を積み上げて61

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