616_R4「個別最適な学び」と「協働的な学び」最終稿【椙村・寺井】
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小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 26 図3-27 児童の振り返りの記述 図3-26 個別支援の様子 60 発展課題1 あなたは国会議員に立候補することにしました。そこで自分をPRするチラシを配り、掲示板等に貼り付ける選挙活動をしたいと思います。ボランティアの方24人に協力してもらい、3600枚のチラシを配ってもらうことにしました。しかし、1枚ずつ数えるのは大変なので、比例の考えを使って3600枚のチラシを分けたいと思います。枚数を数えずに、およそ同じ数になるようにチラシを分けるにはどうすればよいでしょうか。 図3-28 発展課題1の問題文 っているのである。授業の始めに指導者は児童が書いた振り返りを紹介したり、なぜその学習方法がうまくいかなかったのか、なぜその学習方法が自分にとってよかったのか、その理由を児童に問うたりした。児童は、自分の学び方を振り返るだけでなく、他者の学び方を参考にしながら、第7時の学習を進めることとなった。 児童は前時の学習の続きから取り組み始めた。前時に7人グループで学習していた児童は、二人組と三人組に分かれて学習を行っていた。一方指導者は、支援を要する児童を集めて、二人同時に個別支援を行ったり、理解が不十分であると見取った児童に「走った道のりが5kmのときの走った時間は?」と問題文にはない新たな問いを投げかけたりしながら、単元で身に付けるべき技能を意識した働きかけを行っていた(図3-26)。 この学年の児童は、様々な学習方法を試す中で、自分の考えをもってから教科書を読んだり、友だちと話し合ったりする方がよりよい学びにつながることを理解していた。そのため、教科書の使用に制限をかけず、GIGA端末の共有フォルダもいつでも見ることができる状態にしておいた。一人学びをしている児童や二人学びでもわからない児童は、教科書を使ったり、GIGA端末で共有された友だちの考えを見たりしながら学習を進めていた。一つ目の学習課題(学習プリント)を終えた児童の中には、二つ目の学習課題に取り組む児童もいれば、教科書の練習問題やデジタルドリルに取り組む児童もいた。学びを生かしたい児童は問題作りに取り組んでいた。 本時は、11人が三つ目の学習課題に、8人が二つ目の学習課題に、1人が一つ目の学習課題に取り組んでいる状態で終了した。本単元に限ったことではないが、子どもたちは指導書等に目安として設定されている学習時間よりも早く学習を進めることができるということがわかってきた。ただし、学習が速く進むことがいつも良いというわけではない。児童の実態や学習内容に合わせて圧縮できそうな時間を学習の振り返りや学びを生かす活動に充てるなど、単元計画を立てる際に、適切な時間や学習活動を設定する必要があるということである。 (第8時以降) 第8時の開始時に、指導者は友だちと一緒に学習することでわかったつもりになっている場合があると注意を促した。発展課題に取り組む前に、単元で学習した内容を理解できていることが重要であることを説いた。この時間に全ての児童が三つ目の学習課題、もしくは教科書の練習問題や確認問題に取り組んでいた。本実践では、学習するペースを児童が自分でコントロールすることができる。児童はそのよさを生かし、自分の理解が不十分であれば自分の判断で何度も練習問題に取り組んだり、理解できるまで友だちに聞いたりしていた(図3-27)。 第9時以降には発展課題に取り組む児童が現れ始めた。発展課題1(図3-28)に取り組んだ児童は、「チラシの枚数(枚)」と「チラシの厚さ(㎝)」が比例関係であると考えた。そこでまず、コピー用紙をチラシとして見立て、3600枚分のコピー用紙を指導者に用意してもらうことにした。次に、3600枚分の用紙の厚さを測り、24人分で分けた場合の一人当たりの分量を計算で求めた(次ページ図3-29)。一人当たりの枚数と厚さは150枚、1.3833…㎝となった。児童は、既習の概数の考え方を使い、約1.4㎝ずつ分ければ、150枚ずつに分けることができると考えた。実際に1.4㎝で分け、枚数を数えたところ、162枚であった。誤差はあったものの、考

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