616_R4「個別最適な学び」と「協働的な学び」最終稿【椙村・寺井】
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小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 25 図3-25 (左)前単元での児童Gの振り返り (右)本単元第6時の児童Gの振り返り 図3-23 教室内の様子 図3-24 児童の学習プリント 指導者は、大人数では話すことが目的となり学習が捗らないのではないだろうかと考えたが、あえてその場での指導はしなかった。それは、学び方を学ぶとは、学習がうまく進まない、深まらないといった失敗の経験も大切であると考えたからである。1時間内で指導すべき学習内容を全ての児童に理解させることを目的とした場合、こういった、あえてうまくいかない経験をさせてみるということはなかなかできないだろう。もちろん、児童が友だちと話すだけで何も学ばずに終わる可能性もある。しかし指導者は、児童がよりよい学び方に気付いてくれると信じ、そのとき選択した学習方法で本時は取り組ませることにした。 全体として、学習を開始して5分間は、「何求めるん?」「どうすればいいん?」といった、学び合いとはほど遠い発言が多くみられたが、徐々に選択した課題に没頭していった。7人で進める児童も、「なぜここの数値はこうなるん?」「比例は2倍、3倍と増えたら、片方も2倍、3倍になるから…」といった算数科の用語、単元で学習した知識を使って話し合う様子が見られるようになってきた。学習開始20分後には、次の学習プリントに取り組み始める児童が現れたが、早く解き終えること自体を目的とした児童は少なかった。問題を解き終えると、友だちと答え合わせを行い、「やっぱりそうやんな!」「え?なんでその答えになるん?」と、一つ一つなぜそうなったのか互いの考えを順序立てて伝え合っていた。また、「わからへんから教えて」と助けを求めてきた友だちに対して、簡単な値に変えたり、表を使ったりするなどして、どうにかしてわかってもらえるよう工夫して説明する様子が教室の至るところで見られた。学習の手順で三つの数学的活動を行うように示していたが、児童によっては、適した学習方法を自己選択する中で、自ずとそれらの数学的活動を行っていた。 児童だけで、表したいことを表しやすい縦軸や横軸の目盛りの値について考えたり、比例関係を表やグラフにかき表したりすることができていた(図3-24)。本時は、4人が一つ目の学習課題に、15人が二つ目の学習課題に取り組んでいる状態で終了した。 (第7時) 課題選択学習では、「単元の目標の達成」と、「自分に適した学び方の自覚」を目的に、前時の学び方を必ず振り返ってから学習に取り組むように指導した。図3-25に示すのは、前時に7人グループで学習を進めた児童Gの振り返りである。前単元で、友だちと一緒に学習するよさを学び、本単元では友だちと一緒にするにしても適した人数があるということに気付いている。様々な学習方法を試せる単元設計や学習環境、学び方を振り返る場の設定によって、児童にとって最適な学び方を自覚することにつなが59

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