小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 21 図3-14 (左)長方形と台形に見立てた図 (右)考え方を話し合う児童の様子 (太線と太文字は筆者による加筆) 図3-15 児童が求めた運動場の面積 図3-16 児童Bの建設の要望 図3-17 児童Aが児童Bに考えを説明している様子 のである。ただ、児童は互いに考えを出し合うも、なかなか解決の糸口を見いだせない様子であった。指導者は、支援として「授業で複雑な形の面積を求めるときにはどのように考えればよかった?」と問いかけた。すると児童は、「分けて考えたり、全体から引いたりして考えた。…そうか!」と声を上げ、運動場の地面に考えをかき始めた。まず、畑を運動場の一部分とし、運動場を大きな長方形と見立てた。そして、全体から一部を引く考え方を使って、見立てた長方形から畑の部分を引くことで、運動場の面積を求めようと考えたのである。しかし、フェンスの向こう側は長さを測ることができなかったため、分ける考え方で考えることになった。児童は、図3-14のように、長方形と台形の形に見立てて二つの図形に分けることができた。しかし、台形の面積の求め方は第5学年の学習内容であるため、結局、面積の求め方がわからずまた悩むこととなった。指導者は、互いに意見を出し合いながら、学習した考え方を生かして解決を試みたことを褒めたのち、今回は台形の形一方、発展課題③を選択した児童Aは、「お客さんの要望に合わせて家を設計する」課題を選び、児童Bに家についての要望を聞き取った(図3-16)。次に、学習条件にある、家の面積が100㎡に収まるように、家の形を縦10m、横10mの正方形に設定した。児童Aは聞き取った要望以外にも、児童Bがより住みたくなるようにいろいろなアイディアを出して設計していた。例えば、要望にあった庭をベランダとしても使えるようにしたこと、ベランダ(庭)の横に自分の部屋をもってくることで、すぐに庭で遊べるようにしたこと、寝室の横にトイレをもってくることで、夜トイレに行きたくなってもすぐ行けるようにしたことなどである。児童Aは自身の日常生活とつなげながら、各部屋の大きさや間取りを考えていた。こうして児童Aは児童Bにを長方形と捉えて考えてもよいことを伝えた。子どもたちは、運動場を二つの長方形が合わさった図形と捉え直し、どこの長さを測る必要があるのかもう一度三人で話し合った。実際の長さを測り終えたときには、学習を開始してから60分が経過していた。教室に戻った三人は、運動場の形や、測ったところの長さを共有し、各自が計算して面積を求めることができた(図3-15)。発展課題①のように、様々な場所で学習を進めることができることによって、身の回りにある課題は常に教科書のような整った形ではないことに児童は気付いただろう。数学的な見方・考え方を働かせ、複雑なものを正方形や長方形に見立てたり、学習した考え方を使ったりしながら、何としてでも解決しようとする姿が見られた。指導者の支援を要する場面もあったが、児童はそれぞれの考えを尊重し、話し合う中で新たな発想を得て、解決に至ることができたのである。これは、本研究がねらった「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一つの在り方として捉えられるのではないだろうか。 55
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