616_R4「個別最適な学び」と「協働的な学び」最終稿【椙村・寺井】
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【授業の実際】 小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 20 54 発展課題3 あなたは家をデザインする設計士です。 ①お客さんの要望に合わせて家を設計することになりました。 ②自分が住みたい理想の家を設計することにしました。 あなたは、どのような家の形にしますか。また、部屋の配置をどのようにしますか。学習条件や要望に合う家を設計しましょう。 <学習条件> ・家の面積は、100㎡以内にすること (庭やプール、ガレージなど屋根がない部分は家の面積にはふくまない) ・部屋(リビング、寝室、お風呂など)は三つ以上作ること ・各部屋の面積(広さ)を求めること 【学習課題の意図】 ・相手の要望に応じてデザインを提案する、クリエイティブな学習課題にすることで、児童の学習意欲を高める。 ・社会場面を切り抜いた課題にすることで、自分の家など、身の回りにあるものにも、数学的な見方・考え方が生かされていることに気付けるようにする。 図3-13 運動場の形(太線と太文字は筆者による加筆) 本実践では単元末に2時間連続の活動時間を設定した。児童は、全体での問題発見・解決プロセスの中で、自分に適した学び方が少しずつわかってきている状態である。今回提示する学習課題は自身の興味・関心に合わせて学習課題を自己選択してもよいことにしているが、授業開始前に次の三つのすべきことを確認した。 (確認した内容) ・自分に適した学習方法で取り組んでもよいが、計算は自分ですること ・図や式、言葉などを使って考え方を書き残すこと ・単元で学習したことを生かし、必ず一つ以上は時間内に解決すること 授業開始とともに、児童は自分の興味のあるものや、やってみたいと思う学習課題を選択した。問題文を読み、どんな間取りにしようかと一人でじっくり考えたり、友だちと一緒にロッカーや教室などの長さを測ったりするなど、自分に適した学習方法や解決のアイディアは多様なものとなった。発展課題②と発展課題③は、まず一人で考えようとする児童が多かった。一方、発展課題①を選択した児童は、二人から三人一組で取り組む児童が多かった。 発展課題①を選択した児童の中に、運動場の面積を求めてみたいという児童が数人いた。児童は指導者に運動場での学習の許可をもらい、メジャーを持ち運動場に向かった。安全面を考慮し事前に学生ボランティア等の人員を確保したり、児童の活動を予測してメジャーを準備しておいたりするなど、学習環境を整えることも指導の個別化に必要な条件の一つである。 ある三人組のグループは運動場に着くと、持ってきた紙に運動場の略図をかいた。そして、運動場の周りの長さを手当たり次第に測りだした。しばらくすると、測れたもののその長さをどのように生かして面積を求めればよいのかわからず悩むことになった。その理由は、実際の運動場の形は、算数科の授業でよく出題されるような整った形ではなく、複雑な形をしているからである(図3-13)。運動場内には児童館や体育倉庫があり、どこまでを運動場とみなしてよいのかも悩みの種であった。その三人はどちらかといえば算数は得意ではなかった。活動後に、なぜこの三人で学習をすることにしたのか尋ねたところ、「かしこい人が入ると、その人たちだけが理解して、自分たちが考えることができないから」と答えた。仲がよいからという理由もあったかもしれないが、学習方法を自己選択する経験の中で、この学び方の意義を理解し、自分たちの向上につながる学習方法を自己選択していた※①②どちらか選択

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