小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 18 52 がら自らに適した学びに取り組めたことがうかがえる。 生徒E、F、Gのように単元末課題①に取り組んだのは学力高位層、中位層の生徒であった。また、生徒H、Iのように単元末課題④に取り組んだのは学力低位層の生徒が多かった。どちらの学習課題に取り組んだ生徒も自分に適した難易度の学習課題に取り組めることや、指導者の様々な支援によって課題解決に至ることができた。実践後に振り返りを行ったところ以下のような回答が得られた。 生徒E:自分のレベルに合わせて問題が解ける。みんなと意見を出し合って答えがだせるから学びが多い。 生徒J:自分で課題を選択するのはよかったが、友だちと問題を解く時間が一時間では少なかった。 生徒K:自分のレベルにあった問題を解くことができるため、自分のレベルをやってる人が少なかったり、教えてくれる人が別の問題をしている場合、一人でしなければならないので困る。 生徒Eは自分の理解度に合わせて学習課題を選択するよさや、他者と協働的に学ぶことのよさを実感したようである。一方、中には時間が足りなくて解き切れなかった生徒や、友だちに聞くことができなかったという生徒もいた。生徒Jは学習課題を選択して取り組んだものの、授業時間内には解決に至らなかったようである。自分の理解度を把握できておらず、難しい問題に取り組んでいたことが要因の一つとして考えられる。また、生徒Kのように自分の理解度に合った学習課題を選択して取り組んだものの、他の生徒が自分とは違う学習課題に取り組んでいたために、自分の考え方を伝えることができず、学びが深まらなかった生徒もいたようである。 全ての生徒が自分に適した学習方法や学習課題を選択できるようにするためには、指導者は学習課題を工夫するだけでなく、同じ学習課題に取り組む生徒同士をつないだり、生徒が行き詰まったときに追発問を行うなどの支援を行ったりすることが大切である。 実践後のアンケートには次のような教科の学びに近い記述も見られた。 ・相似な図形の学習(で学んだ解き方を使って)の建物の高さが同じぐらいに見えるか(の解き方を使って)、どれぐらいの高さの建物を建てればいいかを考えるのに役立つと思いました。 ・(高さが違う)東京タワーとスカイツリーを同じ長さで見たいとき(辺の比が等しい性質を使って)計算して求められるなぁと思った。 これらの生徒の記述から、学習方法や学習課題を選択する経験を積むことで、学び方を学ぶことができ、その際オーセンティックな学習課題に取り組むことで日常の場面で数学的な見方・考え方を働かせることにつなげることができると考えられる。 第2節 小学校での実践 小学校の研究実践は京都市立小学校2校(以下「C校」「D校」)で行った。対象学年はC校第4学年、D校第4学年、第6学年である。本節では、単元末課題選択学習(2~3時間)と単元全体課題選択学習の2時間以上を子どもたちに委ねる授業実践について述べる。 児童に学習を委ねる実践は、児童が学び方を学んできていなければ難しいことは明らかである。本実践の児童は、研究協力員のもと第2章第2節で述べた数学的活動を通して学ぶ経験を積み上げた状態である。 (1)算数科でのオーセンティックな学習課題について 単元末課題選択学習(2~3時間)と単元全体課題選択学習では、次の3点を意識して複数のオーセンティックな学習課題を作成した。 ①既習の学習内容、他教科での学習内容、児童の生活経験と関連付けることのできる学習課題 ②様々な場所で、実際にものの長さや重さ、時間などをはかる活動を取り入れた学習課題 ③児童の発想を生かすクリエイティブな学習課題
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