616_R4「個別最適な学び」と「協働的な学び」最終稿【椙村・寺井】
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小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 17 図3-10 解き方を考える様子 図3-11 生徒Gの考え 図3-12 友だちに考え方を聞く様子 質が使えると考えたようである。 生徒Fも同じく単元末課題①に取り組み始めたが、途中で行き詰ったために、生徒Eと話し合うことにした。隣で考えていた生徒Gもこの中に加わり、単元末課題①について3人で解き方を考えることになった(図3-10)。 生徒Eと生徒Fは生徒Eのノート(前ページ図3-9)を示しながら、次のようなやりとりをして学びを進めた。 生徒F「この距離(ABとAD)の比率がわかったらいいのではないか」 生徒E「でも、(ABが)どんなときにこの比率が成り立つのかがわからない」 生徒F「距離と高さ(ABとBC)をどのように出せばいいのかな?先生、教えてください」 生徒Eと生徒Fは図をもとに辺の比に着目し、相似比を用いて距離や高さが求まるのではないかと解決への方針を力を合わせて考えたが、生徒Eは具体的な値をあてはめれば求めることができると考えていたものの、あらゆる地点にあてはまる表し方がわからず行き詰ったために、生徒Fは指導者に助けを求めた。 この発言に対して指導者は「(相似比を使って距離や高さを求めようとしている)考え方はいいと思うけど、一般的に表したらどうなるかな?」と問いかけた。生徒Eが考えたようにABがわかれば相似な図形の性質を使い計算によりBCを求めることができるが、あらゆる値を当てはめるのではなく、式で表して一般化することにより、どのような距離における高さでも求めることができると気付かせようとした。こうして生徒E、F、Gは、文字を用いて式で表せることを理解し、どのような式で表せるかについて考えた。 生徒Gは図と式、考え方の説明をノートにかき表した(図3-11)。そして振り返りに「縮図を書いて考え、問題文だけじゃわからなかったことを簡単に求めることができた。グループ内で考えを共有しながら、この場合だったらどうなるかなど、話し合いながら学ぶことができた。」と記述している。図式化し、他者と説明し合うことで、簡単に求められる考え方や自分とは違う考え方に気付くことができるなど、数学的活動を通して協働的に学びを深めることができていた。 一方、全体学習で扱った内容に近い単元末課題④に取り組んだ生徒もいる。生徒Hは教科書の内容を振り返りながら一人で取り組んだが、どのように解けばよいのかわからない様子であった。そこで指導者は、教科書やノートのどの部分を見直せば考えることができるのかなどを伝え、生徒Hが一人で学び進められるように支援を行った。しかし、生徒Hはそれでもわからなかったので、同じく単元末課題④に取り組んでいた生徒Iに考え方を聞くために助けを求めた (図3-12)。 生徒Hは教科書やノートといった学習道具を選択して自力解決をしようと取り組んだ。一人で考えるだけでは解決できなかったが、指導者の支援や生徒Iに教えてもらうことで時間いっぱいかけて取り組み、解を求めることや説明を記述してGIGA端末で提出することができた。また、生徒Iは単元末課題④を解決してなお時間に余裕があったために、単元末課題③にも取り組み、授業後に提出した。このように、生徒H、Iは自分に必要だと思った学習方法、自分の理解度に合わせた学習課題を選択し、単元で学んだ学習内容を活用しな51

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