616_R4「個別最適な学び」と「協働的な学び」最終稿【椙村・寺井】
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小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 15 出典:地理院地図(https://maps.gsi.go.jp/) ・地理院地図を加工して作成 出典:地理院地図(https://maps.gsi.go.jp/) ・地理院地図を加工して作成 金閣寺 京都御所 南禅寺 西院 大宮 伏見稲荷大社 上賀茂神社 比叡山 徒は学習方法の選択を試みていったが、実践を繰り返し行うことで【第10時】の実践のように指導者が指示を出さなくても、生徒がそれぞれの学びに進むことができるようになっていった。学習方法を選択する経験を積むことで、生徒自身が自分に適した学びができるようになり、考えを広げたり、理解を深めたりすることにつながったと考えられる。 一方、実践を通して課題も見えてきた。実践後のアンケートには学習方法を選択して学び進めることについて「分からなかったときは、すぐに友だちに聞きに行って理解をすることができるので良かったと思う。」という記述があった。他者と学び合うのではなく、解き終えた友だちの考え方や答えを聞いたり写したりするだけになっている生徒もいたことになる。 初期段階では指導者が適切な指示をし、指示を徐々に減らしていくことで生徒は自分に適した学習方法で学びを進めることにつながるが、学習課題の難易度によっては自力解決することができない生徒がいたこともたしかである。全ての生徒が同じ「今日の課題」に取り組んだが、生徒に時間を委ねるだけでは学びが深まらないこともあり、生徒にとって適切な難易度の学習課題の設定がやはり必要である。 ○課題の選択(単元末:50分間)~3年生「図形と相似」(全25時間)~ 単元末にオーセンティックな学習課題や単元の学習内容を活用して取り組める学習課題など難易度が異なる複数の学習課題を設定し、生徒が自分の理解度に合わせて学習課題を選択し、学び進める授業となるよう実践を進めた。 本実践はB校3年生「5章 図形と相似」単元の全25時間のうちの24時間目に単元末課題①~④を設定して行った。本単元は、三角形の相似条件などを用いて図形の性質を論理的に確かめ、数学的な推論の必要性や意味及び方法の理解を深め、論理的に考察し表現する力を養うこと、相似の定義を基本的な立体にあてはめて理解し、相似な図形の性質を用いて図形の計量ができるようにすることを主なねらいとしている。単元末課題①~④は難易度が異なるが、どの課題を選択して解いても本単元の目標を達成できる課題となるように設定した。 単元末課題① 上賀茂神社(標高88m)から比叡山山頂(標高848m)を見上げる。比叡山 山頂を直接見たいとき、間にある建物などの高さは何m以下である必要がある かを考える。上賀茂神社と比叡山の2地点の地図上の距離が6831mのとき、 距離と高さの関係について理由も含めて説明しましょう。また、実際に見るこ とができるかどうかを考えてみましょう。 【学習課題の意図】 ・相似な図形の性質が使える日常の場面について考える。 ・2点間の距離と高さの関係について、相似な図形の性質を用いて説明できるようにする。 <考える手法> ・式、図、表などを用いて距離と高さの関係を表す。 ・実際の距離や高さについて考察し、説明する。 単元末課題② 下の地図上で西院~大宮間は1.4kmです。 (1)次のそれぞれの距離を求め、どのように考えたかを説明しましょう。 ①金閣寺~京都御所 ②金閣寺~南禅寺 ③南禅寺~伏見稲荷大社 (2)地図上で、金閣寺、京都御所、南禅寺がほぼ一直線上にあり、京都御所~ 大宮を結ぶ直線と南禅寺~伏見稲荷大社を結ぶ直線が平行であると考えら れるとき、京都御所~大宮の距離はどのように考えられるかを(1)の結果を 使って説明しましょう。 49

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