616_R4「個別最適な学び」と「協働的な学び」最終稿【椙村・寺井】
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(2)実践の具体 ○学習方法の選択(単元末に至る授業:20~30分間)~3年生「関数y=ax²」(全16時間)~ 小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 12 図3-1 第3時の「今日の課題」 図3-2 生徒Aの考え 46 ①の視点は本研究のねらいである、数学科の学習場面に限らず様々な文脈の中で働かせることのできる数学的な見方・考え方を伸ばす意図がある。そのとき既習事項を活用することで教科の目標の達成につながると考える。 ②の視点は数学的な表現を相互に関連付けて表すことで、日常や社会生活での場面や数学の場面を数学的に表現して解決することを通して、数学的な見方・考え方を働かせることができるようになり、そのよさを実感させる意図がある。 ③の視点における数学的な見方・考え方は、決まった解を求めるために働かせるだけでなく、自分で解決に向けての見通しや条件を考え、学習したことを生かしながら問題発見したり解決したりできる力を育んでいくことになると考えた。 本実践では課題の選択(単元末:50分間)として提供することにした。 本実践はA校3年生「4章 関数y=ax²」単元で、生徒が学習方法を自己選択・決定して学び進める実践である。本単元は、具体的な事象における二つの数量の変化や対応を調べることを通して、関数y=ax²について、変化の割合やグラフの特徴など関数の理解を深め、関数関係に着目し、その特徴を表、式、グラフを相互に関連付けて考察することを主なねらいとしている。指導者は単元の中の第3時、第5時、第9時、第10時の授業で「今日の課題」を設定し、50分間の授業の前半や後半の一部(20~30分間)を生徒に委ねる実践を行った。 【第3時/全16時間】 右に示すのは第3時の授業後半に取り組んだ課題である(図3-1)。この時間は、〔「知識及び技能」を習得するための全体指導→「今日の課題」(20分程度)→まとめ、振り返り〕という展開で授業を行った。全体指導では、「関数y=ax²において与えられた条件から式をつくり、xの値が決まったときのyの値を求める」方法について学んだ。 多くの生徒は問題文から式をつくったり、xに値を代入してyの値を求めたりすることはできるので、教科書やノートなどを見直すと(1)(2)を解くことはできる。しかし、(3)は値を求めるのではなくxの値の個数を求める問いである。そこで、学んだ知識や技能を使ってどのように解を導き出すのか、よりよい方法を考えて他者と考えを説明し合う必然性から「協働的な学び」が生まれると考えた。 この学習時間に入る前に指導者は次の指示をした。 ・教科書やノート、GIGA端末など何を見て問題を解いてもよい ・どのように考えるのかわからないとき、自分の考え方を確認したいときに誰かと話し合ってもよい ・周りの友だちがまだ考えているときは、教室の後ろなどで他の友だちと話し合ってもよい 生徒はそれぞれ課題解決に取り組み始めた。関数y=ax²では、あるyの値に対するxの値は二つ存在する。生徒Aはこの性質を使って考え、xの値は180通りであるとノートに記述した(図3-2)。また、生徒Bは表を用いてxの値が正の整数である場合を調べ、同様にxの値が負の整数である場合もあることからxの値は6通りであると考えた(次ページ図3-3)。 この活動では教科書やノート、GIGA端末の過去の学習内容を見直すなど、学習道具を選択して学ぶ生徒が見られた。一方、自分の考えをかき終えてから他者と考え方を伝え合う様子は見られなかった。 yはxの2乗に比例し、x=1のときy=6である。 (1) x=2のときのyの値を求めなさい (2) y=150のときのxの値を求めなさい (3) yの値が2桁の整数のとき、xの値は何通り考え られますか。

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