第1節 中学校での実践 中学校の研究実践は京都市立中学校2校(以下「A校」「B校」)の3年生を対象に行った。本節では、学習方法の選択(単元末に至る授業:20~30分間)、課題の選択(単元末:50分間)の授業実践について述べる。生徒に学習方法や学習課題の選択を委ねる実践は、生徒が学び方を学んでいなければ難しいが、本実践での生徒は、研究協力員のもと第2章第2節で述べた数学的活動を通して場面によって協働的に学ぶ経験を積み上げた状態が出発点となっている。 (1)数学科でのオーセンティックな学習課題について (10)奈須正裕『「資質・能力」と学びのメカニズム』 東洋館出版社 2017.5 pp.166-168 (11)前掲(10) pp.166-168 ・個別支援 ・理解を深める追発問 ・子ども同士をつなぐコーディネート ・よりよい考え方や表現の仕方を共有 ①既習の学習内容を活用する必要のある日常や社会生活での場面を取り入れた学習課題 ②式、図、表、グラフなど数学的な表現を相互に関連付けて表すことができる学習課題 ③解が一つにならない、生徒自身が条件を設定し説明する学習課題 小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 11 第3章 研究実践の実際 (12)前掲(8) pp.70-71 を解決したり、より発展的なオーセンティックな学習課題に取り組んだりするなど、自分の学習到達度や理解度に応じて自分に合ったペースで学習を進めることができる。また、学習を進めていく中でわからないことがあれば、前の問題に立ち戻りもう一度理解し直したり、先に学びを進めている友だちに教えてもらったりすることもできる。 学習到達度や理解度は一人一人異なるため、自分に合ったペースで協働的に学び進めることによって、より一人一人の資質・能力を高めていくことができると考える。また、学習の学び方を日々調整することで、自分に適した学び方を自覚することもできると考える。 第3節 指導者の役割 「個別最適な学び」とは「個に応じた指導」を学習者の視点から整理した概念であるから、子どもが自由勝手に学習を進めていく学びをさすのではなく、指導者には教科等の目標を達成できるように、学びを深めるための様々な指導や支援が求められる。 そばで助言をしながら一緒に問題を解いたりするなど、きめ細かな個別支援を行う。答えを求めることに終始してしまう子どもや、わかったつもりになったまま次の学習活動に移ってしまう子どももいるだろう。そのようなとき、何を根拠にそのように考えたのかを問うたり、考え方や答えが異なる子ども同士をつなぐことで必要感をもって説明することを促したり、本時・単元で身に付けてほしい考え方を表す発言や、説明の仕方を全体に共有したりする。子ども一人一人の学習状況を見取り、適切な指導や支援を随所で行っていくことで、算数科・数学科で育成を目指す資質・能力をより高めていく。具体的な指導者の発問や動きについては、昨年度の研究実践でも述べているので参考にしていただきたい(12)。 本実践を行うにあたり、次の3点を意識してオーセンティックな学習課題を作成した。 本研究では、指導者の役割として昨年度から行っている左記の指導や支援を継続して行うこととする。 学級には多様な子どもが在籍しているからこそ、指導者は子どもの理解度や学びの行動をよく見取る必要がある。つまずいている子どもがいればヒントカードを提供したり、45
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