616_R4「個別最適な学び」と「協働的な学び」最終稿【椙村・寺井】
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ィックな学習課題の例の一つとして前ページ図2-2を示す。この学習課題は、学習した四角形の形の特徴や性質を生かし、ロゴマークやキーホルダーなどのデザインをかき表すものである。デザインをかき表すためには、学習した知識や技能を活用する必要がある。自分の興味・関心に合わせてデザインする際に、ある四角形を上下左右に反転したり、縦や横に長細くしたりなどすることにより、教科書に出てくるものとはかけ離れた形でも四角形だといえることに気が付くかもしれない。そして授業の最後に、学習したことをどのような場面で生かすことができるかを振り返ることにより、学んだ図形が自分たちの身の回りにも多くあることや、日常生活の中でデザインとして生かされていることに気付き、日常の場面でも数学的な見方・考え方を意識的に働かせることができるようになると期待することができる。 このような学習課題を子どもの興味・関心や様々な学力層に合うように複数提供し、日常や社会でも働く数学的な見方・考え方を育むことで、課題を見つける力を伸ばしていけると考える。 第2節 学習方法や学習課題を自己選択・決定できる授業デザイン 本研究で、子どもに委ねる時間は中学校数学科で20~30分から1時間、小学校算数科で2~3時間から単元全体とする。まず、委ねる時間が比較的短い中学校の実践計画を示す。 (1)中学校数学科 中学校数学科では昨年度の実践で行った「思考過程の見える化」を取り入れた授業を継続した上で、本年度は生徒自身が日々の授業の中で学習方法を自己選択・決定し、特に単元末の授業では学習課題を自己選択・決定できる授業デザインを提案する。 数学的活動としては昨年度と同様、以下の二つの活動を必ず行う。 ア:言葉に加えて式、図、表、グラフなど数学的な表現を用いて表す イ:自分の考えを伝え合う 単元末の授業では、自分に適した「数学の事象から問題を見いだし解決する」ような課題や、「日常の事象や社会の事象から問題を見いだし解決する」ような課題を選択できるように単元設計をする。 ①学習方法の選択(単元末に至る授業:20~30分間) 「問題発見・解決プロセス」を取り入れた学習では、生徒の学習の定着度や理解度、興味・関心に応じて課題を自己選択・決定し自分のペースで学び進めていくことが大切であり、一定長い時間、選択・決定できる時間を設けられるとよいが、初期段階から長時間を生徒に委ねても、どのように学び進めればよいかわからない生徒もいるだろう。そこで、まず50分間の授業の一部(20分間程度)を生徒に委ね(図2-3)、生徒が自ら取り組みたくなるように指導者は下記のような要件を満たす学習課題を「今日の課題」として提示する。 「今日の課題」の要件 ・全体で学んだ知識や技能を生かす必要がある ・解が一つに定まらない ・多様な考え方ができる 課題の工夫により、この時間、生徒が学習道具を自分で選択し、今まで学んだことを確認、活用し、それぞれのタイミングで学習形態を選択して自力解決、学び合いを行いながら課題解決に向かうことができると考える。 小・中学校 教科指導(算数科・数学科) 8 図2-3 時間を生徒に委ねる授業デザイン 42 「今日の課題」は、生徒がどのように考えて解を導き出したのか、他者と考えを説明し合う必然性が生まれるよう工夫した学習課題である。時間の制約があり、必ずしも毎時間設定できるわけではないが、生徒が自分に適した学習方法を選択して学び進める時間を単元の中で繰り返し設定することとした。

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