第2節 本市(京都市)のOJTの実態 (1)本市のこれまでの取組と課題 図1-1 教員の勤務経験年数の推移(一部抜粋) (文部科学省 学校教員統計調査) 108 表1-1 教職キャリアステージ(筆者により編集)(9) *1 本稿での若手教職員、中堅教職員、ベテラン教職員の位置付けは表1-1のとおりである。 若手教職員が急激に増え始めた平成25年頃を振り返ると、筆者の周りでも、担任が全員20代という学年団があったり、採用3年目で学年主任をしているという話を聞いたりした。このような事態が多くの学校現場で起こったことで、若手教職員が先輩に相談したり、背中を見て学んだりする機会が減ると同時に、中堅・ベテラン教職員一人当たりが担う役割が多くなり、若手教職員を育成しようとする余裕がなくなってきたのではないだろうか。 コロナ禍の下での学校教育、働き方改革や教員免許更新制度の廃止、GIGAスクール構想の実現に向けた取組等、学校を取り巻く環境は変化し続けている。昨年度一気に導入が進んだGIGA端末を活用した授業を進める際には、各校でGIGA端末に関する知識や技能を身に付けるための研修が多く行われた。その際、端末の扱いに慣れている教職員が中心となり、経験年数に関係なく全教職員で学び合った。これは、全教職員が必要性を感じ、同じ目的意識をもっていたからこそできたことである。他の様々な教育課題についても、このような学び合いが日常的に行われている状態が、効果的なOJTといえるのではないだろうか。中堅・ベテラン教職員から若手教職員への知識や技能の適切な伝承と、全教職員の知識や技能の継続的なアップデートが課題となっている学校現場において、これまで以上に必要とされるのは、教職員一人一人の得意なことや個性を生かしながら、互いに学び合い高め合うことのできる教職員集団なのである。そのためには、全教職員が課題意識をもち、同じ方向を目指して、組織的に取組を進めていくことが重要であると考える。 平成24年に本市の小・中学校の教務主任を対象に行われた「若手教員の教師力向上」に関するアンケートの中に、図1-2のようなデータがある(10)。これによると、「若手教員の教師力向上」に焦点を当てた組織的な取組や助言をよく行っていると回答している割合は、小学校では26.5%、中学校では12.3%とどちらも高いとはいえない。また、アンケートによると、若手・中堅教員が主体的に学び合う取組について、小・中学校の教務主任の約95%が「効果がある」「どちらかといえば、効果がある」と感じてい図1-2 「若手教員の教師力向上」に関するアンケートより 小・中 日常的なOJT 2
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