618_R4「OJT」最終稿【大上】
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第1節 これからの社会に求められる教師像及び学校像 (1)学び続ける教師 と述べている。その中で示されている「教員の勤務経験年数の推移」(p.2、図1-1)によると、教えを請うべき若手教職員よりも、若手教職員を指導し得る中堅教職員、中でもミドルリーダーとしての活躍が特に期待される経験年数11~15年の教職員の方が少ない状況が見て取れる。その改善の具体的な方向性の一つとして、「OJTを通じて日常的に学び合う校内研修の充実」の必要性を挙げている(8)。 第1章 研究主題について Society5.0時代の到来、新型コロナウイルスの流行による生活スタイルの変化等、ここ数年で社会は急激に変化している。学校現場では、学習指導要領の趣旨を実現するための継続的な取組、GIGAスクール構想の実現等、社会の変化に応じて様々な取組が行われている。そのような中で、学校教育においては、一人一人の児童生徒が「多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるよう、その資質・能力を育成すること」が求められている(1)。この資質・能力とは、具体的には「文章の意味を正確に理解する読解力、教科等固有の見方・考え方を働かせて自分の頭で考えて表現する力、対話や協働を通じて知識やアイデアを共有し新しい解や納得解を生み出す力」などである (2)。 予測不可能な未来社会に対応し得る資質・能力を育んでいくためには、我々教師も子どもたちが必要とする学びの変化に柔軟に対応できることが必要であり、常に新しい情報や変化に目を向けて学び続けていかなければならない。教師に求められる資質・能力としては、これまでの答申でも提言されているように、「使命感や責任感、教育的愛情、教科や教師に関する専門的知識、実践的指導力、総合的人間力、コミュニケーション能力、ファシリテーション能力など」が挙げられる(3)。さらに、時代の変化に対応して求められる資質・能力として、情報活用能力などが挙げられ、教師のデータリテラシーの向上が一層必要になってくると考えられている(4)。 教師は、いつの時代も社会の変化に応じて学び続けることが必要である。令和3年に中央教育審議会によって示された「『令和の日本型学校教育』を担う新たな教師の学びの姿の実現に向けて(審議まとめ)」においても、新たな教師の学びの姿の一つ目に「学び続ける教師」が挙げられている。また、こうした学びを進める上で、「自らの日々の経験や他者から学ぶといった『現場の経験』を重視したスタイルの学び」が求められており、「学校における様々な機会や場面を、地域や学校現場の課題の解決を通した教師の学びとして捉えて活用していくなど、日常的なOJTを充実させることが必要である」とされている(5)。 (2)変化に対応し得る学校組織 OJT(On-the-Job-Training)は、「従業員の職業訓練で、仕事の現場で実務に携わりながら業務に必要な知識・技能を習得させるもの。職場内訓練」を意味する(6)。学校現場においては、かつては日々の実践を通して中堅・ベテラン教職員*1から若手教職員へと知識や技能が伝承されることで、資質・能力の向上が図られてきたという側面が強かった。筆者が小学校の教員になってすぐの20代の頃は、30代、40代の先輩と学年を組み、学級経営や学習指導、生徒指導等、常に相談し様々なことを教わった。また、学年内だけでなく、他の先輩からも声をかけてもらったり、自分から相談をしたりもしていた。ある先輩は、話しかけると必ず手を止めて目を見て話を聞いてくれ、その姿勢や態度からも多くのことを学ぶことができた。身近にモデルとなる先輩や気軽に相談できる雰囲気、同年代の同僚などが存在し、今思うと大変恵まれた職場環境であった。 中央教育審議会は、平成27年の答申の中で「学校を取り巻く環境変化」について、 近年の教員の大量退職、大量採用の影響等により、教員の経験年数の均衡が顕著に崩れ始め、かつ てのように先輩教員から若手教員への知識・技能の伝承をうまく図ることのできない状況があり、継続的な研修を充実させていくための環境整備を図るなど、早急な対策が必要である(7)。 小・中 日常的なOJT 1 107

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