① 明確な課題の共有による全員の参画と動機付け ② 伝承や育成を意識した組織づくり ③ 多様な学び合いの機会の設定 この三つの要素について、聞き取り調査で知った各校の具体的な取組を交えて述べる。なお、OJTが有効に機能していると思われる学校では、何でも相談し合える人間関係、風通しの良い職場環境となっているのだが、これは必ずしも前提というわけではなく、OJTに取り組むことでそうなる面もあると思われる。 ① 明確な課題の共有による全員の参画と動機付け 互いに学び合い高め合う教職員集団になるためには、教職員一人一人が課題意識を共有し、同じ方向を目指して取組を進めることが必要である。そこで、自校の課題を解決する主体者として取り組むことができるように、課題の設定や共有方法について工夫している例を紹介する。 〈全教職員で自校を分析〉 120 る。みんなで学校をつくっていくという全教職員の意識を高めるため、各主任を育てるためなど、そのときの目的によってアプローチの仕方を変える。 このようなことを日常的に心がけることで、教職員は誰でも自分の考えを言いやすくなり、新しいことに挑戦してみようという意欲が高まり、学校組織の活性化にもつながる。 〈一人一人の教職員を知り、力を生かした役割分担〉 教職員の得意分野や教科、授業力、コミュニケーション能力等、教師としての資質・能力を把握することはもちろん、ある中学校の学校長は、積極的に教職員とコミュニケーションをとり、教職員の家庭事情や趣味・嗜好等を知り、それに合わせて声掛けなどをされているとのことだった。一人一人をよく知ることで、その人物に合った役割を与えたり、働きかけ方を工夫したりすることができる。 教職員は、自分の力に合った役割を与えられることで、やりがいを感じ、学校長との信頼関係が生まれるとともに、安心して働ける職場、安定した学校組織づくりにもつながる。 〈学校長自ら常に新たなことに目を向け、行動〉 常に新しい情報に目を向け、よいと思った取組や必要なことがあれば、該当の主任に伝えて任せるだけでなく、学校長自ら企画書を作成して提案したり、一緒に方法を考えたりする。教職員がいつでも相談に来られるように、校長室のドアを常に開放している。 教職員にとっては、常に見守られている、相談できるという安心感となり、学校長と教職員のつながりもより深くなる。 〈教職員の頑張りやよいところを発信〉 日常的に校内を見回り、教職員の頑張りやよいところに気付いたら、すぐに褒めたり感謝の気持ちを伝えたりするなど声をかける。また、職朝や会議の場で優れた例や成果を全教職員に伝えたり、場合によってホームページに掲載したりして発信する。中には、新聞社に働きかけて取材を受け、取組を発信している学校もあった。 様々な方法で発信することで、教職員の意欲の向上や認め合う雰囲気の醸成だけでなく、保護者や地域の方々に教職員や学校のことを知ってもらうきっかけにもなる。 (2)OJTを有効に機能させる三つの要素 学校長の的確なマネジメントもそうであるが、取材を通して知り得た各校の取組を整理すると、いくつかの共通点が見られた。その共通点ごとに取組を整理すると、OJTを有効に機能させるためには、学校長の的確なマネジメントの下、次の三つの要素を含んだ取組を行っていくことが重要なのではないかと考えた。 年度末に、自校の課題や強みについてのSWOT分析を全教職員で実施し、そこで話し合ったことを、次年度の学校教育目標や育成を目指す資質・能力等に反映させる。教職員一人一人が関わってみんなでつ小・中 日常的なOJT 14
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