第1節 小学校と中学校のそれぞれの取組の特徴 (1) 小学校の学習で目指すこと 37 37 22 22 254 145 52 67 第2章 研究主題の達成に向けて 図1-3 「定義表現の数」の推移 (1)国立教育政策研究所『令和3年度 全国学力・学習状況調査の結果(概要)』2021 (2)中央教育審議会『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について』2017 p.6 (3)国立教育政策研究所『PISA2009年調査 評価の枠組み OECD生徒の学習到達度調査』 明石書店 2010 p.52 (4)中央教育審議会 『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して (5)京都市教育委員会 『令和3年度「全国学力・学習状況調査」の結果について<資料>』2021 p.2 (6)京都市教育委員会 『令和4年度「全国学力・学習状況調査」の結果について<資料>』2022 p.3 (7)前掲(2)p.7 (8)高橋泰道、藤原奈月 『小学校理科教科書の活用に関わる一考察』 日本科学教育学会研究会研究報告 2018 (9)新井庭子、分寺杏介、松崎拓也、影浦峡 『テキストの難読さに関する定量的分析―小・中学校の理科教科書を事例として』2017 このような教科書の特徴は、より一般性の高い表現が求められたり、それぞれの分野の専門的な用語が用いられていることによりもたらされていると思われる。例えば、水溶液の学習では、小学校の教科書(大日本図書)では「水に食塩やさとうがとけた液体のように、水にものがとけたとうめいな液体のことを水よう液という」というように、水溶液を具体物で説明しているが、中学校の教科書(大日本図書)では「食塩を溶質、水を溶媒、食塩水を溶液という。溶媒が水の溶液は水溶液である」というように、水溶液を説明する1文に、新たな定義を必要とする3つの用語が含まれている。このような抽象的な語句を多く含む表現が増えるため、文章を理解することが困難になると考えられる。 何の手立ても講じないとすれば、生徒は教科の目標に到達するのに必要な用語や概念を獲得することなく、見かけ上活動したり、他者の表現を模倣したりことで目標に到達したかのように見えてしまう状態が常態化する心配がある。 そこで、理科の授業で教科書を用い、これまでとは趣旨の異なる小テストや、いくつかのステップを設けたワークシートを繰り返し用いることにより、自分の力で内容を「読み解く力」を育成したい。これにより理科の目標の達成を確実なものにするとともに、獲得した「読み解く力」が他の教科等の学習でも活用されることが期待できる。 小学校の理科の学習は、身近な現象に注目し、問題を見いだし、予想を立て、検証を行うことで根拠ある考えをもつことを通して問題を科学的に解決するために必要な資質・能力を育むことを目標としている。思考の過程やその手順などを活動を通して学ぶことに重きを置いており、新たな定義や概念を伴うような用語の習得は概ね1週間に一つ程度となっている。そこで、予想や考察、振り返りなどの活動の中に、新出の用語を繰り返し使う機会を設定し、その用語を既習の知識や体験と関連付けさせて理解できるようにし、「思考力、判断力、表現力等」の育成にもつながるようにしたい。 小学校では新出の用語や概念が少ないため、時間をかけて豊かな体験をさせることにより一つの用語や概念を理解させることができる。しかし、中学校に進学すると、新出の用語が増えるため、小学校と同様に扱うことが難しくなる。小学校では、教科書の文章がときに日常生活であまり使用しないような用語や表現がある場合も、指導者がしばしば児童にわかるやさしい言葉で習得を図ることがある。中学校での学習へとつなぐためにも、自分の力で教科書を読んで理解できるようにしていきたい。 ~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)』2021 p.3 小・中 読み解く力 3 75 (筆者が一部加筆)
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