童生徒の潜在的な「思考力、判断力、表現力等」の伸長も期待できると考えた。 第2節 実践のポイント (1) 繰り返しによる定着・伸長 「連続・非連続型テキストから目的に応じて情報を取り出す力」も、他の資質・能力と同様、活動を通して育成する必要がある。特に言葉の力に関しては、繰り返し時間をかけて取り組む必要があることはよく知られているとおりである。 目的に応じて情報を取り出す際に、文章の中で用いられている語句の意味や、グラフや表を読み取る「知識及び技能」はいうまでもなく重要である。それぞれを育成するための活動を毎時間の授業の中に取り入れ、繰り返し実施することで効果が得られると考えている。 繰り返しの仕方としては、(2)の後半に述べる小学校、中学校のそれぞれの教科書の特徴を踏まえて、小学校では、単元の中の数時間それぞれに「情報を取り出す活動」「課題解決のためにそれらを関連付ける活動」「解決のプロセスを筋道立てて説明する活動」を、中学校では、「情報を取り出す活動」を毎時間の授業の初めや、授業に先立つ家庭学習で短時間実施する形が考えられる。 (2) 教科書活用 「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」には「教科書の文章を読み解けていないとの調査結果もあるところであり、文章で表された情報を的確に理解し、自分の考えの形成に生かしていけるようにすることは喫緊の課題である」(7)との指摘がある。教科書は、その学齢に適した語句や文、文章から構成されているはずであるが、それを読み解けていないということは、今、学習している各教科等の内容の理解が困難であるばかりでなく、以降の学習にまで影響する重大な事態といえる。 教科書について、小学校の場合、次のような先行研究がある。高橋らは、小学校教員を対象に行ったアンケート調査の中で、各教科の授業について、年間を通して教科書を使って指導しているかについて質問している (8)。図1‐2が示しているように国語科と算数科では、「毎回使っている」と「使っていることが多い」という回答を合わせると、国語、算数ともに活用している割合が90%を超えている。その一方、社会や理科では「使っていることが多い」を含めれば80%を超えてはいるものの、「毎回使っている」教員は約半数である。その理由の一つとして、社会科では地域の特徴を反映した副読本を活用しているためであると述べられている。また、理科については、児童に興味をもたせたり、実験をする前に結果が分からないようにしたりするために教科書を使用していないと述べられている。 このことから、理科の授業では、児童が文字言語から自分の力で学ぶ機会を十分に与えることができていないとみることができる。 一方、中学校について、別の先行研究では、中学校の理科の教科書(東京書籍2016)は小学校の理科の教科書と比較し、次のような特徴があるとしている。(9) ・日常生活と馴染みの薄い語彙が使われる傾向がある。 ・新しい概念を導入する際に用いられる表現が、小学5年生から6年生への増加量15に対して、小学6年生から中学1年生は増加量108で410%も増加している。(図1‐3) ・既に存在する概念体系の中に位置付け、組み込む際に用いられる表現も同様に増加している。 ・中学1年生から2年生についても、(定義)表現の増加が同程度みられる。 ※()は筆者 図1-2 各教科の教科書活用度 小・中 読み解く力 2 (筆者が一部加筆) 74
元のページ ../index.html#4