617_R4「読み解く力」最終稿【中村寿・中村洋】
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本研究では今年度、「読み解く力」を高めるために、「連続・非連続型テキストから目的に応じて情報を取り出す力」の育成に重点を置き、繰り返しにより「読み解く力」を育成することを目指した。意図的な読みの機会を設定し、児童生徒が語句の獲得や図表等の読み取りができるように手立てを行う中で、小学校・中学校において次のような成果と課題があった。 〇教科書を活用する機会を意図的に作り出すことで、児童生徒が自分の意思で教科書を開き、読む姿が見られた。児童生徒の意見の中に「教科書を見ると分かりやすくなる」「わからないことがあっても教科書を読むとわからないことがわかるようになる」といったものがあった。児童生徒が実際に経験することを大切にし、自分たちが出した実験結果をもとに考えるとともに、教科書をわからないことを調べるための一つの手段として活用することができた。今後、情報を取り出す力を高めていくことで、関連付けるなど活用して思考することや、解決のプロセスを筋道立てて説明する力もさらに高めていけると考える。 〇「読み解く力」を高めるために、「連続・非連続型テキストから目的に応じて情報を取り出す」機会を授業の中に取り入れてきた。本年度は理科で取組を行ってきたが、研究協力員への聞き取り調査の中で、「どの教科でも、大事な言葉を見つけたり、言葉の意味を知ったりする機会や、知った言葉を使用する機会をつくる工夫が必要」とあったように、「どの教科」でも「読み解く力」を高めるための視点をもって授業を行うことが必要だといえる。様々な教科で、「子どもたちはこの語句を正確にわかっているのだろうか」という視点をもって授業を行い、そして、「情報を取り出す活動」「課題解決のためにそれらを関連付ける活動」「解決のプロセスを筋道立てて説明する活動」を繰り返し行っていく中で、子どもたち自身が語句に着目して読むことができると考える。 える。前時で課題が見られた生徒も、手が止まる時間はあったが、グループ内の他の生徒の助言を受け、自分の力で記入することができていた。読み取る情報は、グラフを扱う上で基本中の基本といえる部分であり、全学力層がクリアしたいラインである。中学校の理科の学習におけるグラフの読み取りの基本の段階としては、様式を決め、繰り返しこのワークシートを使用することにより一定の効果があったといえる。 ② 課題 A校で実施された溶解度の学習では、溶解度のグラフを利用して必要な情報を見いだす活動を行った。そのガイドでは「液体の温度が高いほど、大量の溶質が溶解する」関係を文で表すまでしかできない。しかし、溶解度のグラフは、その曲線を越えて溶解している溶質がどうなるか、また、その溶質の質量がどれくらいあるかを把握できることに価値がある。このように、提示されるグラフは、情報を視覚的に捉えるといったことだけでなく、提示する者の意図があったり、多岐にわたる情報が読み取れたりするものである。こういったグラフごとの特徴ともいえる部分を、話型にあてはめるような取組で網羅することは難しい。グラフが示す情報を的確に取り出すためには、グラフに付随する説明文や他のグラフなどといった情報にも目を向け、それらの結びつきや脈絡をつかむ必要がある。この点が、中上位層にとっての課題と考えられる。また、2回目、3回目と繰り返しても活動が捗らない生徒もわずかに見られた。原因として、記入欄の指示を読みながらグラフから情報を取り出すように、2か所に示された情報を交互に照らし合わせることに課題があるのだろうと考えられる。これに関しては、読み解きチャレンジで照らし合わせる活動があるが、仮に生徒にワーキングメモリーの課題があるとしても、取り出した情報を列挙したりマップ上に構造化させるなどワークシートの工夫等により学習を進めることができないものか検討していきたい。 第3節 今後の展望 102 小・中 読み解く力 30

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