617_R4「読み解く力」最終稿【中村寿・中村洋】
31/33

本取組は、教科書を読んで自分なりに理解し、それが誤っていれば助言をもとに正しく理解し直すことで、その後の授業がわかり、活動に参加できるようにするものである。今後、進級、進学などによって、文章量はもちろん内容や表現が抽象的になったり、関連する資料が増えたりするなど、テキストの情報が多くなっていくことを考えると、中学校の教科書について「文が多い 難しい」と感じる実態は解消したい。読み解きチャレンジにより繰り返し教科書を読むことによる成果が一定見られることから、今後さらに、授業の終盤や家庭学習で復習的に再度取り組ませるといった更なる繰り返しが有効であると思われる。一方、表4-2に示したような回答をする生徒に対しては、繰り返しによる効果を期待するのは難しい。「読みチャレはきつい」と答えていた生徒は、聞き取りで「文を読むのがきつい。(書いてある内容が)わからないことが多い。問題の文がわからないこともある。」と言っていた。文章からの情報の取り出しの前に、まず単文の係り受けや抽象的な表現の理解を促す具体例の提示など、個々のつまずきに合わせた手立ての検討が必要だろう。今年度実施した読み解きチャレンジでは、つまずきリストにあるような、文の構造による読み取りにくさに注目した作問はあまりできなかった。今後、解答傾向から、生徒の文の構造の複雑さによるつまずきを指導者が見いだせるような設問を加えることも必要となろう。 (2)グラフ読み取りガイド ①成果 り返したことによる「読み解く力」の高まり、つまり一定の効果と見ることができる。後者は、実践中の学習分野の影響が少なからずあったのではないかと想像される。実践期間に学習していた物理・化学分野は、理論を学習する内容が比較的多く、生徒にとってつまずきが予想される文章表現が多い上、グラフといった非連続型テキストから情報を取り出す学習活動も多いため、教科書から情報を取り出すことの難しさに直面した生徒が一定いたことが考えられる。後者は、学力の課題を抱えている生徒が一部含まれているものの、全体的には学力や学習に向かう姿勢との明確な相関はなく、どの学力層においても教科書の読み取りには困難を感じるものであることがわかる。今後学習が進んでいくにつれ、少しずつつまずきが増えたり、十分な理解ができないまま進度を追うことによって、学力上の課題が現れてくることが予想される。また、実践前後共に「文が多い 難しい」と回答した15.5%の生徒は、定期テストの点数でも課題がある生徒も多く、語句の定着や文章の意味を理解することが十分にできていなかったり、それによって日々の学習の定着が不十分であったりする可能性がある。実践前後ともに「文が多い 難しい」と回答した生徒の感想(アンケートの自由記述欄)を表4-2に示した。 表4-2 読み解きチャレンジの感想 ・取組に関してはネガティブかつ疲れるから好きではない。 ・読みチャレはきつい。 ・読みチャレは適当にしちゃうことがあるし、疲れるから。でも、勉強にはいいかなって思います。 B校では、全体指導の際に、指導者が拡大コピーしたガイドを用いて書き込みながら情報を取り出していたが、手が止まってしまう生徒が何人か見られた。後のグループ活動の際に、グループ内の他の生徒の指示を受けながら全員書ききることはできた。手が止まっていた生徒からは、「横軸・縦軸が何かわからない」や「何を書けばよいかわからない」といった言葉が聞かれたが、グループ内の他の生徒の丁寧な説明で、わからないことが一つずつ解決できた。また、横軸・縦軸の情報を取り出す目的を理解できていないように見受けられる生徒もいたが、活動の締めくくりとなる文で表す段階で、横軸・縦軸の情報を使う必然性に気付いたようであった。 次の授業で扱ったグラフでは、もととなるグラフに新たに記録を加え、二つの結果から読み取れる情報を文で表す活動をした。2時間続けてグラフを読み取る活動となったこの時間では、前時とほぼ同じ記入欄のガイドを提供したところ、詳しい指示がなくても適切に情報を取り出す生徒の姿が見られた。中には前時のガイドを参考にする生徒もおり、決まったステップで繰り返し提示した効果があったとい小・中 読み解く力 29 101

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る