図3‐28 初回のガイド(B校) 傾きに注目すると、「加熱した時間」を抜き、単に「(温度が)変化しない」という記述があるだろうと予想したが、そのような記述は満足できる解答の中にも数件あったものの、全体を見てもわずかであった。これらは、グラフの基本的な読み取り、とりわけ横軸、縦軸に注目するというガイドのねらいに照らせば、効果があったといえるだろう。一方、4割の課題の残る解答については、例えば「(横軸)加熱した時間が(大きくなるほど)(縦軸)温度(が)高くなる」(()内は話型)のように、用語が的確に使えていない例がみられた。こうして、読み解きチャレンジによってさらに解消したい課題が浮き彫りになる結果となった。 第2時は図3-26のグラフを扱った。このグラフは曲線を描く実習課題として掲載されており、水についての曲線に加えて、生徒は教科書にあるエタノールを加熱したときの温度変化をグラフ化し、そこから読み取れることを自分の言葉で記述するものである。これらの曲線から純粋な物質の沸点や融点が物質固有の性質であることを理解することが要点である。したがって、このガイドの「文で表す」欄の記述の目標を、「加熱し続けても状態変化が起こると温度が一定になる」とした。 ある生徒は、グラフの曲線をかき入れた後、手が止まっていた。そこでガイドの「横軸が大きくなるほど……」の箇所を指でさして考えさせると、「7分後には温度が一定になる」と書くことができた。また、物質が状態変化するとき温度が一定になることは前時に学習していたので、グループ活動で出た意見を踏まえ、「温度が一定になっているとき(78℃)はエタノールが沸騰している」ことをグラフからわかることとして追記した生徒もいた。 ② 単元2 3章 物質の状態変化(B校) B校では第1時に、図3-25の基本的な読み取りを、第2時に図3-27の読み取りと二つのグラフの共通点、差異点の説明を、第3時に図3-29の曲線について話型なしで説明する文を書く活動を行った。第1時は、ガイドの右側に生徒の記入欄を設け、グラフの情報から読み取れることを記入する様式にし、練習的な課題とした(図3‐28)。活動の途中で指導者は個別に、取り出した情報とグラフの注目する部分をつなぐ支援を行った。また、ガイドの話型を利用して、「横軸の値が大きくなるほど、縦軸の値が大きくなる」関係を各自が言葉で表す活動を行った。視覚的な支援が加わったこともあり、ほとんどの生徒が書き表すことができていた。その後、主課題として、「温度が変化しないとき」について書き表す活動を行った。ここでは話型にある「~ほど」を「~しても」のように言い換えなければ、適切な文を作ることができない。ガイドの話型の「ほど」の部分に取り消し線を入れてあるのだが、それでも「『ほど』では文が作れない」と悩む生徒には適切な言葉に換えて表すように助言した。 図3-28はグラフの右上がりの部分について、初めは自分の力でグラフが示す変化を説明することができなかった生徒のワークシートである。この生徒は、ワークシートと指導者の指示に従って作業を進めた。まず、タイトル、横軸、縦軸といったグラフの基本的な情報を取り出して空欄に記入し、グラフの形から、「徐々に大きくなる」変化であることを読み取って、話型にある「縦軸は( )」の空欄に「大きくなる」と記入した。その後、「横軸が大きくなるほど」と「縦軸は(大きくなる)」の「横軸」「縦軸」を、基本的な情報として取り出した語句(加熱しした時間、温度)に置き換えて文にし、グラフの右上がりの部分の変化を練習課題として書き表すことができた。続いて、温度が変化しない部分について、練習課題と同じ要領で、「全て水のとき、加熱した温度が大きくなっても温度は変わらない」と自分の力で書き表していた。波線部の語句は、本来は「時間」と書くところであるが、第2時に取り組んだグラフの読み取り段階では、その生徒は正しく取り出せていたので、本時は書き間違えていたのだと思われる。また、第3時は、小学校で学習した事象をグラフにしたものでもあったため、生徒の中には横軸、縦軸の語句を使いつつ、話型にとらわれない自分の言葉による発言も多く聞かれた。 小・中 読み解く力 23 生徒の 記入欄 95
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