図3‐16 生徒が観察眼を獲得するプロセス 小・中 読み解く力 17 ≪導入での実施(B校)≫ B校では先行学習の方法として本時の学習の要点を授業序盤に板書しているが、この板書を行う前に読み解きチャレンジを実施した。生徒にとっては、本時の学習内容に関する教科書の文章に触れる初めての機会となる。5問の問いを3分ほどで解き(図3‐15)、返却された判定を見て授業に臨んだ。 ① 単元2 2章 気体の発生と性質 「酸素と二酸化炭素の性質」の授業で二酸化マンガンとうすい過酸化水素水を入れた試験管から発生した気体を水上置換法で集め、そこに火のついた線香を入れて酸素の性質を確かめる実験を行う際、生徒が発生した気泡を「空気」と呼ぶことがある。これは生徒が「気体」「空気」「酸素」といった区別が曖昧なまま実験に臨んだからだと考えられる。 前もって図3-16のような読み解きチャレンジに取り組ませることで生徒が、語句の表す概念や定義を教科書から正確に読み取り、実験のねらいや方法を理解した上で実験に臨み、さらに自らが表現する場面で必要な用語を適切に運用する姿を目指したい。 この単元は物質の性質に迫る内容であり、実験結果の記録や交流の中で、発生した気体の性質に注目して「酸素」という語句を用いることが求められる。事前に読み解きチャレンジに取り組むことにより、二酸化マンガンとうすい過酸化水素水を反応させて酸素を発生させることを生徒は教科書を自ら読み取って把握しているため、気泡を集める場面において、「気体」や「空気」といった語句ではなく、ものを燃やす性質のある気体である酸素だと捉えることができた。 読み解きチャレンジに取り組むうちに、発生する気体を「空気」とする表現が正確でないことに気付く発言があった。またある生徒は、発生した気体が酸素であることをどのように確かめたらよいかを実験の中盤で問うたところ、その方法と結果の予想を述べていた。この生徒は、前時に学習した「気体の性質を確かめる方法」と本時の「酸素のものを燃やす性質」から、火のついた線香を試験管に入れると酸素の性質から線香の燃え方に変化があると見当をつけることができており、観察中にグループの生徒に説明する姿があった。説明の際に、教科書の該当箇所を指さしながら行っていた姿が見られたが、それは授業の冒頭で教科書を開き、そこから情報を取り出した活動が少なからず影響していると思われる。 実験が捗らず、酸素を集める段階で予定の時間を費やし、燃焼による確かめには至らなかったグループもあったが、そのグループのある生徒は実験中に、水上置換法により生じた気泡を観察しながら「酸素がたまっている」と発言しており、さらに授業後、指導者に、酸素を集めることができたと報告していた。この様子から、実験を最後まで行えなかったグループの生徒も、気体の性質に注目して実験していたことがうかがえる。 さらに、集めた酸素の入った試験管の中の方が、線香が空気中より激しく燃えたのはなぜかと問うと、別の生徒は試験管を指さし「こっちの方が酸素が多いから」と答えた。濃度については未習であったた気体 物質の状態の1つ 生徒は現時点であまり区別できていない。 Q.酸素の性質である「助燃性」とは、どのような性質か。 □燃えているものを燃やす性質(5%) □燃える性質(9%) ☑ものを燃やす性質(79%)【正答】 □燃えるものと一緒に燃える性質(6%) 〈実験での生徒の視点(イメージ)〉 空気 窒素と酸素を主とした混合気体 ↓ 〈読み解きチャレンジ〉 ↓ 酸素 特定の性質をもつ気体の1つ 89 燃やす性質の 燃やす性質の 気体=酸素 気体=酸素 この後点火したこの後点火した線香を入れる 線香を入れる =よく燃える =よく燃える
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